6月3日 17:53 【なぜ?】ガソリン代を高くする「ガソリン暫定税率」50年続く二重課税と、問われる与党の姿勢 | マーケターのつぶやき

【なぜ?】ガソリン代を高くする「ガソリン暫定税率」50年続く二重課税と、問われる与党の姿勢

ガソリン価格の高騰が続く中、私たちドライバーを悩ませる「ガソリン暫定税率」。つい先日、この税率を巡って衆議院で委員長が解任されるという異例の事態が起きました。しかし、この問題は単なるガソリン価格の話に留まりません。半世紀近くも「暫定」のまま維持され、その使途すら拡大した「税」の裏側には、長きにわたる政治の「つけ」と、私たち国民が向き合うべき課題が横たわっています。

「暫定」が「恒久」になった税金の不思議と「二重課税」の不公平

ガソリン税の「暫定税率」は、1974年の第一次オイルショック後、道路整備のための臨時措置として導入されました。しかし、本来「当分の間」だったはずが、今日まで50年近くも延長され続けています。

さらに、当初は道路特定財源として使途が限定されていたにもかかわらず、現在は一般財源化され、私たちの年金や医療、子育て支援など、幅広い行政サービスに使われています。そして、この税金は「税金に税金をかける」という二重課税(Tax on Tax)の問題を抱えています。具体的には、ガソリン本体価格にガソリン税(本則税と暫定税率分)が上乗せされた総額に対して、さらに消費税が課税されています。例えば、ガソリン本体価格100円にガソリン税53.8円(本則税28.7円+暫定税率25.1円)が加わり、合計153.8円になったとします。この153.8円に対して消費税10%(15.38円)が課されるため、ガソリン税に対しても消費税が課されている状態となり、これが自動車ユーザーにとって大きな不公平感や納得しがたい負担増に繋がっています。この問題も、長年指摘されながら解決されないままです。

深まる与野党の溝:廃止要求と審議拒否、そして異例の委員長解任

物価高騰が続く中、家計の負担軽減を訴える野党各党は、ガソリン暫定税率の廃止を盛り込んだ法案を衆議院に提出しました。野党は、この「暫定税率」を廃止し、物価高に苦しむ国民の負担を軽減すべきだと主張しています。

対する自民党を中心とする与党側は、「代替財源が示されていないままの廃止は無責任」と反論し、この法案の衆議院財務金融委員会での審議入りを頑なに拒否。法案の審議すら行われないという異例の事態が続きました。

これに対し、野党側は与党の姿勢を「議論からの逃避であり、国民の生活苦を顧みない無責任な態度」と強く批判。特に、委員会の開催に応じない井林辰憲財務金融委員長(自民党)に対し、6月17日に立憲民主党など野党7党が共同で解任決議案を提出するに至りました。そして翌18日、衆議院本会議でこの解任決議案が賛成多数で可決。現行憲法下で、国会の委員長が解任されるのは初めてという、極めて異例の事態となりました。野党は委員長解任という強硬手段を通じて、この問題の審議を求める強い意思を示したと言えます。

一見すると与党の主張にも理があるように見えますが、ではなぜ、この「暫定」と名のつく税金を、半世紀もの間「恒久」として使い続けてきたのでしょうか? その間に、新たな財源を模索し、税制をあるべき姿に改める責任は、一体誰にあったのでしょうか。

しかも、実は2024年12月には、自民・公明両党と国民民主党の間で、ガソリン税の暫定税率を「廃止する方向」で合意がなされていたはずです。これは、国民民主党の榛葉賀津也幹事長と自民党の森山裕幹事長、公明党の西田実仁幹事長が会談し、暫定税率の廃止で合意したものです。しかし、今回の委員会での審議拒否は、この一度交わされた合意を軽視しているかのような姿勢に見えます。国民との約束はもちろんのこと、一度形成された与野党間の政治合意すら容易に覆すような姿勢は、政治に対する国民の不信感をさらに深めかねません。

多くの国民が感じているのは、「政治が、困難な課題から目を背けてきたツケが、今、国民に回ってきているのではないか」という不信感ではないでしょうか。

問われる与党の姿勢:責任の「先送り」か、将来への「無策」か

今回の委員長解任騒動は、与党の姿勢に対する根深い不満を浮き彫りにしました。与党が「代替財源がない」と審議を拒否する背景には、財政規律の維持という理屈がある一方で、その対応自体が長年の「責任の先送り」ではないかという批判も免れません。

もし、この「暫定税率」が本当に必要不可欠な財源なのであれば、なぜ半世紀もの間「暫定」という曖昧な呼称を使い続けてきたのでしょうか。本来、時限的な目的税を一般財源に転用し続けるのであれば、その正当性と必要性について、国民に対し明確な説明を行い、新たな目的税の創設や既存の税制の抜本的見直しを提案するのが、与党の責任ある役割のはずです。

しかし、その抜本的な議論はこれまで見送られ続けてきました。「国民の負担増は避けたい」という民意を忖度するあまり、あるいは「税制改革は支持を失う」という政治的リスクを恐れて、必要な改革を怠ってきた、という見方もできるでしょう。

この「先送り」の姿勢は、現在の物価高騰という国民生活の危機において、一層の矛盾として露呈しています。国民の痛みに寄り添うというのであれば、単に補助金でしのぐだけでなく、税制の歪みを是正する本質的な解決策を提示し、議論を主導する責任が与党にはあるのではないでしょうか。

与党が審議を拒否した真の狙い:可決阻止の戦略か

自民党がガソリン暫定税率廃止法案の審議を拒否した表向きの理由は、「代替財源が示されていない」というものでした。しかし、これにはより深い戦略的な狙いがあると指摘されています。

おそらく最大の理由は、審議が進み、採決に至ることで法案が可決されてしまうことを防ぎたかった、という点にあります。与党は衆議院全体では多数を占めていますが、委員会レベルでは与野党の勢力が拮抗する場合や、特定の課題に対しては与党内にも様々な意見があるため、必ずしも常に圧倒的多数を確保できるとは限りません。特に、国民の生活に直結する物価高対策の減税法案は、国民の強い支持を得やすい性質があり、野党が結束すれば可決の可能性も十分に考えられます。もし委員会で可決されてしまえば、本会議への上程を阻止するのが難しくなります。

与党にとって、一度可決されてしまった法案を覆すのは政治的に大きなダメージとなります。そのため、議論の結果として敗れるリスクを回避するため、「議論そのものをしない」という選択をしたと見ることができます。これは、議会における多数派の権限を行使し、自らに不利な展開を未然に防ぐための戦略である、とも言えます。

審議拒否は「横暴」か? 民主主義の根幹への問い

このような与党の審議拒否の姿勢は、まさに「横暴」と批判され得る根拠となります。

  • 議会制民主主義の否定: 議会は、多様な意見を戦わせ、議論を通じて国民にとって最適な結論を導き出すための場です。多数派が自らの不利な採決を避けるために、議論の入り口すら封じることは、この議会制民主主義のプロセスそのものを機能不全に陥らせる行為であり、その根幹を揺るがす「横暴」であると強く批判されます。
  • 「責任」の放棄: 「代替財源がない」という批判はもっともですが、それならば与党が主体となって代替財源を提示したり、新たな税制の議論を主導したりする責任があります。議論から逃げることは、その責任を放棄しているに等しいと見なされます。
  • 「数の力」の悪用: 与党が持つ議会運営上の優位性や、委員長ポストを握っていることを利用して、議論自体をさせないという手法は、まさに「数の力」の悪用であり、少数意見を封じる「横暴」な振る舞いと捉えられます。

もちろん、野党が委員長解任という異例の強硬手段に出たことも「横暴」と見る向きはありますが、それは与党の「審議拒否」という、より本質的な議会制民主主義の否定とも取れる姿勢に対する、野党側の「最後の手段」あるいは「政治的抗議」の表れであった、と解釈することができます。

結論として、与党が自らに不利な法案の可決を防ぐために審議を拒否したとすれば、それは議会制民主主義の原則に反する「横暴」な行為であり、国民に対する説明責任の放棄であると批判されても仕方ないでしょう。この一連の出来事は、日本の政治が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。

「難しい」は、政治家の「仕事」

「新たな税金を作るのは難しい」「国民の理解を得るのは困難だ」。これらは、政治家が頻繁に口にする言葉です。しかし、その「難しさ」を乗り越え、国民に真摯に説明し、合意を形成していくことこそが、政治家、特に与党のリーダーに求められる「本来の仕事」です。

自らに不利な法案の可決を防ぐために、民主主義の根幹である「審議」を拒否し、議論の場を封じるような政党が、はたして「与党」を名乗るにふさわしいと言えるでしょうか。安定した財源を確保し、公平で透明性のある税制を設計することは、国の未来を担う上で不可欠な責任です。この問題から目を背け続けることは、長期的に日本の財政と社会に深刻な影響を及ぼしかねません。

あなたの「一票」が未来を変える

もうすぐ、私たちの代表を選ぶ参議院選挙が始まります。

ガソリン暫定税率の問題は、単一の政策課題ではなく、税のあり方、財政の健全性、そして政治家の責任といった、日本の根幹に関わる問題の縮図です。

現在の与党の姿勢は、長年の「先送り」と、目の前の「審議拒否」によって、国民の政治不信を深めていると言わざるを得ません。果たして、このままで国民の生活と日本の未来は守られるのでしょうか。

私たちは、この問題に対して「各政党が、どのような解決策を提示しているのか?」「過去の先送りの責任をどう考えているのか?」「一度交わされた政治合意の重みをどう考えているのか?」「国民の負担と国の未来をどうバランスさせようとしているのか?」を、冷静に見極める必要があります。

あなたの生活に直結するこの問題に、真剣に向き合い、具体的なビジョンを示せる候補者や政党はどこでしょうか?

「どうせ変わらない」と諦めるのではなく、未来に向けた建設的な変化を求めるならば、私たち一人ひとりの「一票」が、その変化を生み出す唯一の力です。

さあ、投票に行きましょう。そして、私たちの生活と日本の未来を託すに足る、あなたにとっての「最善」を選び取りましょう。