6月3日 17:53 ハッシュタグよ、さようなら? X広告の突然の仕様変更がマーケターに突きつけた課題 | マーケターのつぶやき

ハッシュタグよ、さようなら? X広告の突然の仕様変更がマーケターに突きつけた課題

2025年6月27日、X(旧Twitter)はハッシュタグを含む広告の配信を順次停止するという方針を発表しました。

長らくXの拡散の核であったハッシュタグが、広告の世界から姿を消すというこの決定は、多くのマーケターに衝撃を与えました。

「#新商品」「#キャンペーン」といったハッシュタグを付けた広告で、トレンド入りを狙い、一気にユーザーの目に触れる機会を増やすという、これまでの定石が通用しなくなったのです。

これにより、現在配信中のハッシュタグ付き広告はすべて順次配信が停止されます。 現場の担当者は、いますぐキャンペーンを確認し、対応を進める必要があります。

この突然の仕様変更は、長年Xの拡散戦略の要であったハッシュタグの役割を根底から覆すものであり、企業は広告戦略の抜本的な見直しを迫られています。

なぜ、ハッシュタグは広告から排除されたのか

この決定の背景には、2つの主要な理由があります。

1. イーロン・マスク氏の「美観」へのこだわり

Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は、かねてから「ハッシュタグは美観を損なう」という見解を示していました。今回の変更は、彼のプラットフォームに対するビジョンが広告プロダクトにも反映されたものと言えるでしょう。

2. 広告効果の最大化

ハッシュタグをクリックしたユーザーは、広告主が意図するランディングページではなく、そのハッシュタグに関連する他の投稿ページへと遷移してしまいます。この「導線の逸脱」は、広告の最終的な目的であるコンバージョンを妨げる要因でした。Xは、広告のクリエイティブそのものにユーザーの注意を集中させ、コンバージョンへの動線をよりシンプルかつ直接的なものにしたいと考えているのです。

オーガニック投稿とプラットフォームの進化

今回の変更は広告(有料)投稿に限定されており、オーガニック投稿(無料)におけるハッシュタグの使用は引き続き可能です。しかし、この動きはXが目指すプラットフォームの将来像を明確に示唆しています。

Xはハッシュタグ検索に頼るのではなく、AIを活用したレコメンデーションシステム「For You」フィードを主軸に据え、ユーザーの興味関心に基づいたコンテンツを自動的に推奨する方向にシフトしています。これにより、ハッシュタグの持つ「発見」や「拡散」の機能が、AIのアルゴリズムによって代替されていく可能性が示唆されます。

現場担当者がいますぐ取るべき対応と今後の戦略

この仕様変更に対して、現場の担当者と企業の戦略担当者は、それぞれ異なる対応を迅速に進める必要があります。

【現場担当者向け】いますぐ確認すべきこと

  • 既存キャンペーンの総点検と停止: 現在配信中の広告キャンペーンをすべて確認し、キャプションだけでなく、画像や動画、GIFなどのクリエイティブ内にハッシュタグが含まれていないかをチェックしてください。含まれている場合は、速やかに広告の停止または差し替えが必要です。
  • 新しいクリエイティブの制作: ハッシュタグなしでユーザーの興味を引くための、より魅力的なコピーやビジュアル、動画の制作をいますぐ開始してください。直接的なCTA(Call to Action)で、ウェブサイトへの訪問などを促す内容に切り替える必要があります。
  • 予算配分の見直し: X広告のパフォーマンス低下が懸念される場合、Meta広告(Facebook/Instagram)やTikTokなど、他プラットフォームへの広告予算配分を柔軟に見直す準備をしておきましょう。

【戦略担当者向け】新たな広告戦略の構築

  • コンバージョン重視の広告フォーマットへの注力: 動画広告やカルーセル広告など、ユーザーの視覚に直接訴えかけるフォーマットの活用を強化します。
  • ブランドテイクオーバー(旧プロモトレンド)の活用: 高額ではあるものの、ハッシュタグに頼らずトレンド欄をジャックすることで、ブランド認知を一気に高める戦略が有効です。
  • 広告効果測定指標の再定義: 「ハッシュタグ経由の拡散」に代わり、コンバージョンレート(CVR)やウェブサイトへの直接流入数ブランドリフトといったより具体的な成果指標をKPIに据えます。

他のソーシャルメディアとの比較

今回のXの動きは、他の主要なSNSプラットフォームとは異なる独自の方針です。

  • Meta広告(Facebook/Instagram): 現在もハッシュタグの使用は可能であり、コンテンツの分類や発見に役立つツールとして機能しています。
  • TikTok広告: ハッシュタグがキャンペーンの核となる「ハッシュタグチャレンジ」など、ハッシュタグがプロモーションの中心的な役割を果たす代表的なプラットフォームです。

この違いから、Xの変更はプラットフォームごとの特性に基づいた独自の方針であり、すべてのSNSに共通するトレンドではない点に注意が必要です。

FAQ(よくある質問)

Q. 配信が停止された広告は、自動的にアーカイブされますか?

A. 配信停止後の挙動はアカウント設定に依存しますが、多くの場合、ステータスが「停止済み」に変更されます。手動で広告を停止・再設定することが最も確実な対応です。

Q. オーガニック投稿でハッシュタグを使用すると、投稿のリーチが減るなどの影響はありますか?

A. 現在のところ、オーガニック投稿のリーチに直接的な影響はありません。ただし、AIによるレコメンデーション強化により、ハッシュタグの重要性が相対的に低下する可能性はあります。

Q. 他のSNSプラットフォームも同様の変更を行う可能性は?

A. 現時点では、他プラットフォームで同様の発表はありません。特にハッシュタグが文化に根付くTikTokなどでは、Xのような変更は考えにくいです。

本質的なマーケティングへの回帰

今回のXの仕様変更は、ハッシュタグに依存した拡散戦略からの脱却を促すものです。今後、Xで成功するためには、より精緻なターゲティング、魅力的なクリエイティブ、そして具体的な成果に焦点を当てた広告運用が求められます。

これは、プラットフォームの進化とともに、マーケティングの力が「バズ」から「本質的な価値」へと回帰していく動きと言えるでしょう。ハッシュタグに頼らない、質の高いコンテンツと戦略的な思考が、今後のXマーケティングの鍵となります。