「報・連・相」はビジネスの基本として誰もが知っていますが、最近ではその報連相を円滑にするための新しい言葉が注目されています。それが、上司の心得として使われる「おひたし」です。
これは「ほうれんそうのおひたし」という言葉でセットで使われることもあり、上司と部下のコミュニケーションを劇的に改善するヒントが詰まっています。この記事では、「おひたし」が持つ意味と、なぜ上司にこの姿勢が求められるのかを解説します。
「おひたし」が意味するものとは?
「おひたし」は、部下からの報連相を適切に受け止めるための、上司の行動指針を表しています。それぞれの頭文字が持つ意味は以下の通りです。
- お(怒らない):部下からの報告や相談に対し、感情的になったり、頭ごなしに怒ったりしない。
- ひ(否定しない):部下の意見や提案を、まずは最後まで聞く姿勢を持ち、頭ごなしに否定しない。
- た(助ける):部下が困っている状況を察知し、必要なタイミングで手助けをする。
- し(指示する):部下が次に取るべき具体的な行動や、解決策のヒントを明確に指示する。
報連相が「部下から上司への情報伝達」である一方、「おひたし」は「上司が部下の情報を受け止める姿勢」を表しています。この両輪が揃って初めて、健全なコミュニケーションが成立するのです。
なぜ今「おひたし」が必要なのか?
上司に「おひたし」の姿勢が求められる背景には、現代の職場のコミュニケーション課題があります。
部下が「チンゲンサイ」になってしまうから
最近話題になった「チンゲンサイ(沈黙・限界まで言わない・最後まで我慢して済ませる)」という言葉をご存知でしょうか?これは、部下が問題を一人で抱え込んでしまう状態を指します。
部下がチンゲンサイに陥る最大の原因の一つが、「上司に相談したら怒られる」「否定される」という恐怖心です。上司が「おひたし」の姿勢で接することで、部下は安心して報告や相談ができるようになり、チンゲンサイを防ぐことができます。
心理的安全性を高めるため
「おひたし」の実践は、チームの心理的安全性を高めることにも直結します。メンバーが失敗を恐れずに意見を言ったり、助けを求めたりできる環境は、チームの生産性と創造性を向上させます。上司が怒らない、否定しない姿勢を示すことで、部下は「自分は受け入れられている」と感じ、活発なコミュニケーションが生まれるのです。
「おひたし」の実践:上司が今日からできること
では、具体的に「おひたし」をどのように実践すれば良いのでしょうか?
- 部下の報告をさえぎらない:部下が話している途中で意見を言ったり、結論を急かしたりせず、まずは最後まで聞きましょう。
- 「ありがとう」と伝える:報告や相談をしてくれた部下に対し、「報告してくれてありがとう」「助かったよ」といった感謝の言葉を伝えることで、部下は「また報告しよう」と思えます。
- 一方的な指示を避ける:「これをやっておけ」ではなく、「どうしたら解決できると思う?」と問いかけることで、部下は自分で考える力が身につきます。
- 手助けの提案:部下が問題を抱えている兆候を見せたら、「何か手伝えることはある?」と積極的に声をかけ、サポートを申し出ましょう。
これらの行動は、部下が安心して発言できる心理的安全性の高い環境を作り出す上で非常に重要です。部下からの報連相を単なる「報告」として受け取るのではなく、信頼関係を築き、部下の成長を促すための貴重な機会と捉えることが、「おひたし」の実践の鍵となります。
ただし、「おひたし」の実践には、以下のような注意点も存在します。
- 「助ける」の落とし穴: 過剰な手助けは、部下の自律性や問題解決能力を奪う可能性があります。部下が自分で考え、行動できるように、あくまで「ヒントを与える」ことに徹しましょう。
- 「指示する」の落とし穴: 細かすぎる指示は、部下の自主性を損ない、「指示待ち人間」にしてしまう可能性があります。指示の粒度を調整し、指示の背景や目的を伝えることが重要です。
- 「怒らない・否定しない」の落とし穴: ミスや改善点に対して指摘を避けると、部下の成長を妨げる可能性があります。感情的にならず、建設的なフィードバックを心がけましょう。
「おひたし」は、あくまで円滑なコミュニケーションを築くための土台です。この土台の上で、上司が部下を適切に育成していく姿勢があってこそ、真のチーム力が発揮されると言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「オヒタシ」は、どんな上司でも実践できますか?
A1. はい、部下との信頼関係を築くための第一歩として、誰でも実践できます。まずは「怒らない」「否定しない」という2点を意識することから始めると良いでしょう。部下からの小さな報告や相談にも「ありがとう」と伝えることで、部下は安心して報連相をできるようになります。
Q2. 「オヒタシ」を実践すれば、部下は必ず報連相をしてくれますか?
A2. 「おひたし」は、部下が安心して報連相できる環境を作るための上司の姿勢です。すぐに効果が出ない場合もありますが、継続することで部下の信頼を得られ、コミュニケーションは必ず改善されていきます。重要なのは、一度の失敗で諦めず、根気強く「怒らない」「否定しない」姿勢を貫くことです。
Q3. 「チンゲンサイ」と「おひたし」はセットで覚えるべきですか?
A3. はい、その通りです。部下の「チンゲンサイ」(問題を抱え込む状態)を防ぐためには、上司が「おひたし」(受け止める姿勢)で接することが非常に重要です。この2つの言葉は、現代の職場におけるコミュニケーション課題と解決策を対比させて理解するのに役立ちます。
Q4. 「おひたし」の「た」は「助ける」ですが、部下の仕事をすべて手伝うべきですか?
A4. いいえ、すべて手伝う必要はありません。「助ける」とは、部下の仕事を肩代わりすることではなく、部下自身が解決できるようにサポートすることです。例えば、情報やリソースを提供したり、他のメンバーとの連携を促したり、方向性を示唆したりすることが含まれます。部下の成長を促すためには、「どうすればできるか?」を一緒に考えるスタンスが重要です。
Q5. 「おひたし」を実践しても、部下との信頼関係が築けない場合はどうすれば良いですか?
A5. 「おひたし」を意識しても関係性が改善しない場合、部下が個人的な事情で悩んでいたり、過去の経験からトラウマを抱えていたりする可能性も考えられます。業務外の雑談を増やして人となりを知る努力をしたり、人事や専門家に相談したりすることも一つの方法です。また、自身のマネジメントスタイルを客観的に見直す機会にすることも大切です。
「ほうれんそうのおひたし」で最強のチームを作る
「報連相」は部下の努力だけでは成り立ちません。それを受け止める上司の「おひたし」の姿勢がなければ、部下は次第に口を閉ざしてしまうでしょう。
上司と部下が双方の役割を理解し、「ほうれんそうのおひたし」を実践することで、チームのコミュニケーションは活性化し、問題解決能力の高い、風通しの良い組織を築くことができます。
あなたのチームでも、今日から「おひたし」を意識してみてはいかがでしょうか。