2025年7月20日の投開票が行われたばかりの第27回参議院議員通常選挙。この選挙で、参政党は再び多くの有権者の注目を集め、その存在感を一層強めました。2022年の参議院選挙で初の国政議席を獲得して以来、着実に支持層を広げてきた参政党。一体この政党はどのような理念を持ち、どんな政策を掲げているのでしょうか? 既存の政治に閉塞感を感じている方や、日本の未来に漠然とした不安を抱える方々がなぜ参政党に惹かれるのか、その実像に迫ります。
参政党の基本情報と設立経緯
参政党は、「今の政治を変えなければ日本の未来が不安だ」という危機感を持った一般の人々が、「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」を合言葉に、2020年に小さな政治団体として発足しました。特定の支援団体や既存の資金源を持たず、国民一人ひとりの想いを結集して活動しているのが最大の特徴です。
その設立理念は、「子供や孫の世代によい日本を残したい」という強い願いに基づいています。神谷宗幣氏を中心に、日本の国益を守り、世界に大調和を生むことを目指しています。綱領には「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」と掲げられており、日本の伝統や文化を重視する姿勢が明確に打ち出されています。
参政党の主要政策:3つの重点分野
参政党は、日本の未来を左右するとして、以下の3つの分野を特に重視し、具体的な政策を提唱しています。
教育・人づくり
参政党は、単なる学力向上だけでなく、自ら考え、学ぶ力を育む教育を重視しています。具体的には、家庭の教育方針に合わせて多様な教育機会を選べるよう教育バウチャー(クーポン)制の導入を提唱。フリースクールなど既存の学校に捉われない教育環境の整備も進めるべきだとしています。また、日本に誇りが持てる教育、道徳教育の推進を通じて、日本人としてのアイデンティティを育むことを目指します。若い世代が安心して結婚や子育てができる社会の実現にも力を入れています。
食と健康・環境保全
化学物質に依存しない食と医療、そして循環型の環境保全を追求しています。現代の食生活や医療への疑問を投げかけ、薬やワクチンに過度に依存しない治療・予防体制の強化、そして国民自身の自己免疫力向上を訴えます。農業を重視し、安心安全な食料供給体制を構築するため、第一次産業従事者の支援や、種子・肥料の国産化推進も掲げています。特に、昆虫食や培養肉など新たな食料への疑問を呈し、伝統的な和食や米食を推進する姿勢も特徴的です。
国のまもり(国防・外交・経済・財政など)
日本の自立と国益を最優先する姿勢を強く打ち出しています。経済面では、積極的な財政支出と減税政策で経済を立て直し、少子化問題の解決にも繋げようとしています。過度な移民受け入れや外国資本の流入には規制をかけ、日本の国富が海外に流出することを阻止すべきだと主張。エネルギー政策においても、メガソーラーや風力発電による環境破壊に反対し、「CO2排出実質ゼロ」を前提とした次世代火力発電の推進を提提唱するなど、独自の視点を示しています。国防面では、自衛隊の強化や情報戦への対応など、日本の安全保障体制の確立を訴えています。
参政党独自の憲法観:「創憲」を掲げる背景
参政党の政策の中でも特に注目されるのが、憲法に関する独自の考え方である「創憲」です。これは、現行の日本国憲法を一部改正する「改憲」でも、現状維持の「護憲」でもない、まったく新しいアプローチを意味します。
「創憲」を掲げる背景には、参政党の以下の認識があります。
- 占領下で制定された憲法への疑問: 現行の日本国憲法は、第二次世界大戦後のGHQ(連合国軍総司令部)の占領下で制定されたものであり、日本人の真の意思や価値観が十分に反映されていないという認識を持っています。彼らは、この憲法が「押し付けられた」ものであり、日本の歴史や伝統、文化、そして国家観にそぐわない部分があると考えています。
- 「日本の国柄」を反映した憲法の必要性: 参政党は、憲法は単なる国のルールブックではなく、その国の理念や哲学、そして国民の価値観を反映したものであるべきだと主張します。彼らが目指すのは、日本の「国柄」を明確に打ち出し、日本が自立するための根本理念となる憲法です。
- 国民が主体となるプロセスへの重視: 憲法改正の議論が国会や専門家の間で進められることが多い中で、参政党は「創憲」のプロセスそのものに大きな意味を見出しています。国民一人ひとりが憲法について深く考え、議論し、自らの手で憲法を創り上げていくことが、主権国家としての誇りと責任を取り戻す第一歩になると考えています。
このような背景のもと、参政党は2年がかりで党員と共に議論を重ね、2025年5月に独自の「新日本国憲法(構想案)」を公表しました。この構想案は、参政党が目指す「日本の国柄」や国家観、哲学を反映させたものと位置づけられています。
構想案の具体的な内容については、現行憲法の国民主権、基本的人権、平和主義といった三大原則に対する参政党独自の解釈や、その反映のされ方が議論の対象となっています。例えば、天皇のあり方、教育に関する記述、人権規定の詳しさなど、様々な点で活発な議論が交わされています。また、戦前の大日本帝国憲法との類似性や、自民党が改憲案に盛り込もうとしている緊急事態条項への反対など、他の政党との違いも明確になっています。
参政党は、全国各地で「創憲フェス」やワークショップを開催し、国民に憲法に関する議論を促す活動を積極的に展開しています。
参政党の活動スタイルと支持層
参政党は、従来の政党のような大規模な組織や特定の利権団体に頼らず、全国の党員がボランティアで支える「草の根」の活動を基盤としています。彼らは、既存のメディア報道が少ないという認識のもと、YouTubeやX(旧Twitter)などのSNSを積極的に活用し、政策や理念を直接有権者に届けています。また、全国各地で頻繁に街頭演説や勉強会、タウンミーティングを開催し、党員や支持者との対話を重視しています。
このような活動スタイルは、既存政党への不満や閉塞感を抱く層、特に食の安全や健康、子育て、そして日本の伝統や文化の維持に高い関心を持つ層からの支持を集めています。特定の政治イシューに深く共感する人々が、自ら声を上げ、行動する場として参政党を見出していると言えるでしょう。
参政党の評価と課題、今後の展望
参政党の躍進は、日本の政治に新たな選択肢をもたらし、多様な議論を巻き起こしています。既存政党とは異なる独自の視点や政策提言、そして国民の素朴な疑問や不安に寄り添おうとする姿勢は、多くの支持者から評価されています。情報発信力と草の根的な活動で着実に支持を広げてきた点は特筆すべきでしょう。
一方で、その政策の具体性や実現可能性、あるいは一部の主張が「陰謀論的」「非科学的」だと批判されることもあります。また、多様な意見を持つ現代社会において、特定の価値観を強く打ち出すことが、どのような影響をもたらすのかについても議論の対象となることがあります。
しかし、2022年参議院選挙での国政進出、2024年衆議院選挙での挑戦、そして今回の2025年参議院選挙でのさらなる躍進を経て、参政党は国政における存在感を確実に高めています。今後は、獲得した議席をどのように活かし、政策実現に向けて既存政党とどう向き合っていくのか、また地方政治への浸透をどう進めていくのかが焦点となるでしょう。国政での役割が拡大するにつれて、人材育成や組織の安定化といった課題にも直面していくと考えられます。
まとめ
参政党は、日本の未来に危機感を抱く人々が立ち上げた、新しい形の政党です。彼らが掲げる教育、食と健康、国のまもり、そして「創憲」という独自の憲法観は、従来の政党とは一線を画す視点を持っています。
特に「創憲」については、現在の日本国憲法が抱える国防面での課題や、日本の自立を巡る懸念を解消する可能性について議論を促しています。同時に、参政党が提示する「新日本国憲法(構想案)」には、その内容を巡って様々な意見や懸念も存在します。しかし、このように国民全体で新しい憲法のあり方について議論することは、今後の日本の姿を考える上で非常に重要なプロセスであると言えるでしょう。
今回の参議院選挙の結果を受け、日本の政治においてさらに重要な役割を担う可能性が出てきました。参政党の動向は、今後の日本を考える上で無視できない存在となるでしょう。どの政党を支持するかは個人の自由であり、多様な情報源に基づき、自らの目で判断することが重要です。この記事が、参政党について深く理解し、日本の未来について考えるきっかけとなれば幸いです。