OTC類似薬とは?知っておきたい保険診療と市販薬の境界線 | マーケターのつぶやき

OTC類似薬とは?知っておきたい保険診療と市販薬の境界線

「病院でもらった薬が、ドラッグストアで売られている市販薬とほとんど同じだった」――。そんな経験はありませんか?

実は、医師の処方箋が必要な薬の中には、市販薬と同じ、あるいは似た成分を含むものが存在します。これらは「OTC類似薬」と呼ばれ、日本の医療費をめぐる大きな議論の対象となっています。

今回は、このOTC類似薬が何なのか、そしてなぜ問題視されているのかなどについて、ご紹介します。

OTC類似薬って何?

OTC類似薬とは、「医師の処方箋が必要な薬(医療用医薬品)のうち、市販薬と同じような成分や効能を持つ薬」を指す通称です。

「OTC」は「Over The Counter(カウンター越しに)」の略で、処方箋なしで買える市販薬のことです。つまり、OTC類似薬は、「見た目は市販薬だけど、処方箋がないと買えない薬」という少し複雑な立ち位置にあります。

代表的な例としては、以下のような薬が挙げられます。

  • 痛み止め: 医療用「ロキソニン錠」と市販薬「ロキソニンS」
  • 湿布薬: 医療用「モーラステープ」と市販薬「モーラスパップ」
  • アレルギー薬: 医療用「アレグラ錠」と市販薬「アレグラFX」
  • 風邪薬: 医療用「PL配合顆粒」と、総合感冒薬など

これらの薬は、有効成分や効果が市販薬とほぼ同じであるため、「わざわざ保険を使ってまで病院でもらう必要があるのか?」という疑問が投げかけられています。

なぜOTC類似薬は存在するの?

「問題があるなら、なぜ最初から作らないようにしなかったの?」と感じる方もいるかもしれません。

実は、多くのOTC類似薬は、最初から「問題児」として生まれたわけではありません。その背景には、医薬品の歴史と「スイッチOTC」という制度が関係しています。

  • ステップ1:医療用医薬品として開発 まず、新しい薬は「医療用医薬品」として開発され、医師の専門的な管理のもと、病院で使われます。
  • ステップ2:安全性が確認される 長年の使用実績を通じて、その薬の有効性や安全性が十分に確認されます。
  • ステップ3:市販薬に「スイッチ」 安全性が確立された薬は、厚生労働省の承認を経て、薬局で誰もが購入できる「市販薬」に転用されます。この制度が「スイッチOTC」です。

この結果、元々の医療用医薬品も引き続き使われ続けるため、同じような薬が「処方箋あり(OTC類似薬)」と「処方箋なし(市販薬)」という形で並存することになったのです。

ジェネリック医薬品や市販薬との違いは?

OTC類似薬は、同じ「処方箋が必要」という点でジェネリック医薬品と混同されがちですが、目的が全く違います。

  • OTC類似薬: 医療用医薬品と市販薬の関係性に着目した言葉。
  • ジェネリック医薬品: 新薬(先発医薬品)と後発医薬品の関係性に着目した言葉。医療費削減を目的としています。

また、市販薬とは「購入方法」と「費用負担」が大きく異なります。

  • OTC類似薬
    • 購入方法: 医師の処方箋が必要
    • 費用負担: 公的医療保険が適用(自己負担1〜3割)
  • 市販薬(OTC医薬品)
    • 購入方法: 処方箋なしで購入可能
    • 費用負担: 全額自己負担

では、OTC類似薬と市販薬で、どのような価格の違いがあるのでしょうか。この価格の違いを、身近な薬であるロキソニンを例に考えてみましょう。同じ有効成分を持つ薬でも、OTC類似薬として処方された「ロキソニン錠」は保険適用で安く済み、市販薬の「ロキソニンS」は自己負担で少し高くなります。この価格差が、軽症でも病院を受診する人が増える一因となっています。

なぜ今、OTC類似薬が注目されているのか?

日本の医療費は年々増加しており、国の財政を圧迫しています。

OTC類似薬は、本来、セルフメディケーション(自分で市販薬を使って治療すること)で対応できるはずの症状に、保険が適用されることで、医療費を膨らませていると指摘されています。

このため、政府は「OTC類似薬の保険適用を見直すべきではないか」と検討を進めています。保険適用から外す、または自己負担額を増やすことで、国民に市販薬の利用を促し、国の医療費を削減したいという狙いがあるのです。

しかし、これには「患者の負担が大きくなる」「受診控えが起き、症状が悪化するリスクがある」といった反対意見もあり、慎重な議論が続いています。

あなたの薬の選び方が、社会を変える

日本の医療費は年々増加しており、国の財政を圧迫しています。

OTC類似薬は、本来、セルフメディケーション(自分で市販薬を使って治療すること)で対応できるはずの症状に、保険が適用されることで、医療費を膨らませていると指摘されています。

この為、政府は「OTC類似薬の保険適用を見直すべきではないか」と検討を進めています。保険適用から外す、または自己負担額を増やすことで、国民に市販薬の利用を促し、国の医療費を削減したいという狙いがあるのです。

しかし、これには「患者の負担が大きくなる」「受診控えが起き、症状が悪化するリスクがある」といった反対意見もあり、慎重な議論が続いています。

OTC類似薬の問題は、単なる医療制度の話ではありません。それは、私たちが自身の健康と、社会全体の医療制度にどう向き合うかという問題でもあります。

今後、薬の選び方が変わるかもしれません。そのとき、あなたの選択が、持続可能な医療制度の未来を守る一歩につながります。

よくあるご質問(FAQ)

  • Q1: OTC類似薬が保険適用外になると、薬は高くなるのですか?
    • A1: はい、その可能性があります。現在は保険適用で自己負担が1~3割で済んでいますが、適用外になれば、市販薬と同じように全額自己負担となります。結果的に、同じ薬でも費用が高くなる可能性があります。
  • Q2: 軽症でも病院に行くメリットはないのですか?
    • A2: あります。軽症だと思っていても、自己判断では気づけない別の病気が隠れている可能性もあります。医師の診断を受けることで、より正確な病名が分かり、適切な治療につながります。
  • Q3: 医師に「市販薬と同じ薬を出してください」とお願いできますか?
    • A3: 医師の判断によります。医師は患者さんの症状や健康状態を総合的に判断して処方します。市販薬で十分と判断されれば、医師からセルフメディケーションを勧められることもあります。