毎年のように各地を襲う、1時間に100mmを超えるような猛烈な集中豪雨。ハザードマップを開いて「うちは川から離れているし、危険エリアに入っていないから安心」と胸をなでおろしていませんか?
しかし今、ハザードマップで「安全(白地)」とされていた場所が、一瞬で冠水するショッキングな事態が相次いでいます。
実は、近年の千葉県での豪雨被害では、被災報告の半数以上(約55%)が、川の氾濫を想定した「通常の洪水ハザードマップ」の危険エリア外で発生していたという分析結果が出ています。
なぜ、マップで「安全」とされていた場所で被害が多発したのでしょうか。その原因は、大きな川の氾濫ではなく、猛烈な大雨に街の排水が追いつかなくなる「内水(ないすい)氾濫」にありました。
「ハザードマップで危険エリアに入っていなかったのに浸水した」という事態を防ぐために、今すぐ知っておくべき防災の重要ポイントをまとめました。
なぜ「ハザードマップで安全」だった場所が浸水するのか?
一般的によく見られている「洪水ハザードマップ」の多くは、大きな川の堤防が切れたり溢れたりするリスク(外水氾濫)を中心に作られています。そのため、川から離れたエリアは「リスクなし(白地)」と表示されがちです。
しかし、近年多発している豪雨では、マップで安全とされていた場所で以下のような現象が起きています。
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下水道や排水路の処理能力を超えてしまう
多くの都市の下水道は「1時間に50mm程度」の雨を想定して設計されています。しかし、近年の集中豪雨では1時間に80〜100mmを超えるような猛烈な雨が降るため、排水が追いつかず、道路や住宅街に一気に水があふれ出します。
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水が集まりやすい「隠れた低地」が存在する
大きな川が近くになくても、周囲よりわずかに土地が低い「坂の底」や「凹地(くぼち)」、千葉県で多く見られるような「谷津(やつ)地形」などの場所には、周囲一帯の雨水が一気に流れ込みます。
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アスファルト化で雨水が地下に染み込まない
都市部や住宅街は地面の多くがアスファルトやコンクリートで覆われているため、雨水が土に吸収されず、すべて表面を伝って低い場所へ集中してしまいます。
つまり、「川の近くではないから洪水マップ上は白地(危険指定なし)」であっても、内水氾濫のリスクがないわけではないのです。
豪雨時に見るべき「もう一つの地図」とは?
そこで絶対にチェックしてほしいのが、各自治体などが公開している「内水ハザードマップ」です。
洪水ハザードマップが「川からの溢れ」を描いているのに対し、内水ハザードマップは「雨水が街に溢れたときの局所的な浸水や道路冠水」をシミュレーションして作られています。
内水ハザードマップで分かること
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身近な「冠水ポイント」が一目で分かる
線路や道路の下を潜る構造の地下道(アンダーパス)や、周囲より低い交差点、水が溜まりやすい凹地など、普段の生活圏で「大雨の時にどこが水没しやすいか」が具体的に色分けされています。
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浸水の「深さ」の目安が分かる
「膝上まで浸水するリスクがある」「車のエンジンが止まる深さ(20〜30cm以上)になる可能性がある」といったレベル感が把握できます。
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避難や移動の「罠」を回避できる
「洪水マップでは安全な避難ルート」に見えても、途中の道路が内水で冠水して通行不能になるパターンを防ぐことができます。
どうやって探せばいい?
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インターネットで検索する
「〇〇市 内水ハザードマップ」(お住まいの自治体名+内水ハザードマップ)で検索すると、自治体の公式HPでPDFなどが閲覧できます。
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「重ねるハザードマップ」を活用する
国土交通省が運営するウェブサイト「重ねるハザードマップ」を使えば、全国どこでもスマホやパソコンから「洪水」と「内水」のリスクをワンタッチで切り替えて・重ねて確認できます。
今日からできる防災アクション
「ハザードマップを確認しただけで満足してしまう」のはとても危険です。内水氾濫から自分や家族の身を守るために、今日から実践できる3つの具体的なアクションをまとめました。
1. 2つのハザードマップで「自宅・職場・移動ルート」をチェックする
国土交通省の「重ねるハザードマップ」などを使い、自宅や職場だけでなく「いつも使う移動ルート」に潜むリスクをセットで確認しましょう。
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「洪水マップでは安全な避難経路」に見えても、内水マップを見ると途中の道路が冠水想定エリアになっているケースがあります。
2. 日常の歩行・運転時に「街の高低差と水はけ」を意識する
ハザードマップで色が付いていなくても、普段の通勤・通学や散歩の際に以下のような場所がないか観察しておきましょう。
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坂の底にあたる場所や、周囲より一段低い交差点・凹地
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線路や道路の下を潜る地下道(アンダーパス)
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普段から少し強い雨が降ると水たまりができやすい場所
これらは大雨の際、一気に水が集まる「局所的な冠水ポイント」になります。
3. 豪雨時の「移動リスク」と「避難のタイミング」を再確認する
内水氾濫は「雨が激しくなってから水が溜まるまでのスピードが非常に早い」のが最大の特徴です。
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車の運転は控える:水深20〜30cm(乗用車のタイヤの半分程度)でエンジンが停止し、動けなくなる恐れがあります。
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無理な屋外移動を避ける:冠水した道路は用水路や開いたマンホールが見えなくなり非常に危険です。すでに外が激しい雨の場合は、無理に避難所へ向かわず、自宅や近くの頑丈な建物の2階以上へ移動する「垂直避難」を第一選択にしてください。
よくある質問(FAQ)
内水氾濫やハザードマップに関する「よくある疑問」をまとめました。
Q. 自分の住んでいる自治体に「内水ハザードマップ」がない場合はどうすればいいですか?
A. 実は、優先順位やコストの事情から、全国の自治体の中には内水ハザードマップをまだ作成できていない地域も少なくありません。もし未作成の場合は、以下の方法で自分でリスクを推測できます。
「重ねるハザードマップ」で標高を見る:国土交通省のサイトで「標高(地形)」や「道路冠水想定箇所」のレイヤーを表示させ、周囲より低い場所を探す。
過去の冠水履歴を確認する:自治体の防災ページなどで「過去の浸水実績図」が公開されている場合があるため確認する。
地形の歴史を調べる:昔は田んぼ・池だった場所や坂の底にあたる場所は雨水が集まりやすいと捉えておく。
Q. マンションの2階以上に住んでいれば、内水氾濫の対策は不要ですか?
A. 部屋自体が浸水するリスクは低いですが、油断は禁物です。内水氾濫が起きると「1階の電気設備が浸水して停電・エレベーター停止になる」「下水道の逆流により、上層階でもトイレや排水口から水が噴き出す・使用不能になる」といった生活インフラへの被害が発生する可能性があります。
Q. 賃貸物件を選ぶ際も内水ハザードマップは確認すべきですか?
A. ぜひ確認することをおすすめします。不動産契約時の「重要事項説明」では洪水ハザードマップの提示が義務付けられています根拠もありますが、内水ハザードマップは自治体の作成状況によって説明対象から外れる場合があります。入居後に「1階の部屋や駐車場が冠水しやすいエリアだった」と気づかないよう、事前に自分で検索してチェックしておくと安心です。
「ハザードマップの白地=安全」の思い込みをアップデートしよう
「ハザードマップに色が付いていないから大丈夫」というこれまでの常識は、近年の地球温暖化に伴う異常気象によって通用しなくなってきています。
最後に、今回ご紹介した重要ポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
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「洪水」と「内水」は原因もリスクのある場所も別物
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川から離れていても、下水あふれや低地への雨水集中で浸水する
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これからは2つのマップを重ねて見る「Wチェック」が必須
自然災害そのものを止めることはできませんが、正しい知識と少しの準備で被害を最小限に抑えることは十分に可能です。
ご自身やご家族の命を守るために、ぜひ今日このあと、お住まいの地域の「内水ハザードマップ」を検索してみてください。そして、大切な方にも「内水ハザードマップって知ってる?」と声をかけて、防災の輪を広げていきましょう。

