「小泉農水大臣が備蓄米の放出に言及して話題になった『古古古米』って、ぶっちゃけ美味しいの?」 そんな疑問を持った方もいるかもしれませんね。実は、長期間保存されたお米には特有の課題がありますが、美味しくよみがえらせる魔法のような方法があるんです。それが「再精米(さいせいまい)」です。
再精米とは?
再精米とは、その名の通り、一度精米されたお米をもう一度軽く精米することを指します。通常の精米が玄米からぬか層を取り除いて白米にする作業なのに対し、再精米はすでに白米になっているお米の表面を薄く削り取るのが特徴です。
なぜ再精米が必要なの?
お米は生鮮食品と同じで、時間とともに劣化が進みます。特に、収穫から1年以上経ったお米は「古米(こまい)」、2年以上経ったものは「古古米(ここまい)」、そして3年以上経ったものは「古古古米(ここここまい)」と呼ばれます。
時間が経つと、お米の表面にあるわずかな脂肪分が空気中の酸素に触れて酸化し、以下のような状態になります。
- 独特の「ひね臭さ」: いわゆる古米臭の原因です。
- 黄ばみ: お米の色が少し黄色っぽくなります。
- パサつき: 水分が抜け、食感が悪くなります。
再精米は、この酸化して劣化したお米の表面部分を物理的に削り取って取り除くことで、これらの不快な匂いや黄ばみを軽減し、お米本来の風味やツヤ、食感をある程度回復させることを目的としています。
再精米と通常の米研ぎ、どう違う?
「米研ぎとは違うの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。再精米と通常の米研ぎは、目的と方法が大きく異なります。
再精米(古くなったお米向け)
- 目的: 古くなったお米の表面にある、酸化した層(ひね臭さや黄ばみの原因)を削り取り、お米の鮮度をある程度回復させること。
- 対象: 主に古くなったお米(古米、古古米、古古古米など)。
- タイミング: 水を加える前に行うのが非常に重要です。
- 方法:
- 家庭用精米機の「白米みがき」や「再精米」モードを使う。
- 金網のザルにお米を入れ、水をかけずにザルの目にこすりつけるようにして、表面を削り取る。
通常の米研ぎ(新米・通常の古米向け)
- 目的: お米の表面に付着しているごく薄い**「肌ぬか」や埃などの汚れを洗い流し、炊き上がりのご飯の風味を良くする**こと。
- 対象: 新米や、収穫から1年程度の比較的状態の良い古米。
- タイミング: 最初から水に浸し、水の中で研ぐ。
- 方法: ボウルにお米と水を入れ、優しくこすり合わせるように洗う。
どうやって再精米するの?
ご家庭で再精米を行う方法はいくつかあります。
- 家庭用精米機を使う 最近の家庭用精米機には、「白米みがき」や「再精米」といった機能が搭載されているものが多いです。お米をセットしてモードを選ぶだけで、手軽に再精米ができます。
- 金網のザルを使う 精米機がない場合でも、金網のザルがあれば手動で行えます。
- 計量したお米を金網のザルに入れます。
- 水をかけずに、ザルの目にこすりつけるように両手で優しくかき混ぜます。
- お米の表面が少し削れ、白い粉が落ちてきます。これが酸化した部分です。白い粉が出なくなったら再精米は完了の目安です。
ポイント: どちらの方法でも、水を加える前に行うのが重要です。お米が水を吸ってしまうと、劣化した部分を取り除きにくくなるためです。再精米が終わってから、改めて水で通常通りお米を研ぎましょう。
再精米したお米の保存方法と注意点
再精米は古いお米を美味しく蘇らせてくれますが、精米後のお米はさらにデリケートになります。適切な保存方法で、品質を保つことが大切です。
賢い保存方法
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密閉容器に入れる
- 再精米でお米の表面を削った分、空気に触れる面積が増え、酸化が進みやすくなります。密閉性の高い容器(密閉容器、ペットボトル、ジッパー付き保存袋など)に入れて、空気に触れないようにしましょう。
- お米は周りの臭いを吸いやすい性質があります。特に冷蔵庫に入れる場合は、他の食品の臭いが移らないよう、しっかりと密閉できる容器を選びましょう。
- 湿気はカビや虫の発生、お米の劣化の原因です。必要であれば乾燥剤を一緒に入れるのも効果的です。
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低温で保存する
- お米の最適な保存温度は10~15℃と言われています。冷蔵庫の野菜室は、この温度帯に近く、直射日光も当たらないため、お米の保存に最も適しています。
- 冷蔵庫に入りきらない場合は、直射日光が当たらず、温度変化の少ない涼しい場所(床下収納や暗い戸棚など)を選びましょう。湿気がこもりやすいシンクの下などは避けてください。
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温度変化を避ける
- 頻繁に冷蔵庫から出し入れすると、温度差で結露が生じ、湿気の原因になります。必要な量だけ取り出し、すぐに冷蔵庫に戻すようにしましょう。
知っておきたい注意点
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保存期間は短くなる
- 再精米によって酸化した部分を取り除けても、精米直後の状態に戻るわけではありません。むしろ、表面を削った分、通常の白米よりも酸化が進みやすくなると考えられます。
- 一般的な白米の保存目安は、精米後、夏場で2週間、冬場で1ヶ月程度です。再精米したお米は、この目安よりもさらに早めに消費することを心がけましょう。
- 特に、ひね臭さがひどかったお米を再精米した場合は、完全に臭いが消えるわけではないため、早めに食べきるのが賢明です。
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炊飯時の水分量に注意
- 古米は新米に比べて乾燥しているため、再精米しても水分量はそれほど回復しません。炊飯する際は、新米よりもやや多めの水で、長めに浸水させると、ふっくらと炊き上がります。
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虫やカビに注意
- 再精米しても、お米自体の水分含有量や保存環境が悪ければ、虫やカビが発生する可能性があります。再精米前の古米にすでに虫やカビがいた場合は、再精米しても完全に除去できるわけではありません。異常が見られたら、食べるのは避けましょう。
「古古古米」をさらに美味しく!調理のヒント
再精米で下準備をしたら、次は炊き方や調理でさらに美味しくする工夫をしましょう。
- 炊飯時にひと工夫:
- 水を多めに: 古米は乾燥しているので、新米より1割ほど多めに水を入れるのがおすすめです。
- 浸水時間を長く: 最低でも1時間、できれば2~3時間しっかり浸水させると、お米が水を吸ってふっくらします。
- 調味料を加える: 少量(米2合に対し大さじ1程度)の日本酒やみりん、米油を加えると、臭みが抑えられ、ツヤやコクが増します。
- アレンジレシピで活用:
- 味が濃いめの料理に: カレーやチャーハン、ピラフ、リゾットなど、具材や調味料の味がしっかりしている料理に使うと、古米特有の風味が気になりにくくなります。
- 炊き込みご飯: 具材の旨味が染み込み、美味しく食べられます。
- お寿司や丼物: 酢飯にしたり、タレをかけたりする料理も、古米のパサつきを感じにくいでしょう。
古古古米の栄養価と再精米の影響
「古くなったお米は栄養がないの?」と心配になるかもしれませんね。
お米の主要な栄養素である炭水化物やタンパク質は、長期保存しても大きくは変わりません。ただし、ビタミンB群などの水溶性ビタミンやミネラルは、時間とともにわずかに減少する可能性があります。
再精米によってお米の表面を削ることで、これらの微量な栄養素がさらに失われることもありますが、その影響はごくわずかです。普段の食事で他の食品からバランス良く栄養を摂取していれば、過度に心配する必要はありません。
再精米にも限界が!食べるのを避けるべきケース
再精米は古いお米を美味しくする有効な方法ですが、万能ではありません。以下のような場合は、残念ながら食べるのを避けるべきです。
- 目に見えるカビが生えている: 白、緑、黒っぽい斑点など、カビが確認できる場合は絶対に食べないでください。カビは表面だけでなく、お米の内部にまで菌糸を伸ばしている可能性があり、健康被害につながる恐れがあります。
- 酸っぱい匂いがする: 古米臭とは明らかに違う、酸っぱい匂いや発酵臭がする場合は、腐敗が進んでいるサインです。
- 異常な粘りがある: 炊飯後にお米が異常にねばつく場合も、微生物が繁殖している可能性があるため注意が必要です。
- 虫が大量に発生している: 虫が湧いている場合は、食べるのは控えましょう。
再精米は、古くなったお米を美味しく食べるための素晴らしい工夫ですが、あくまで一時的な延命措置です。再精米後は、できるだけ早く消費し、適切な保存方法で品質を保つことが大切です。
話題になった「古古古米」も、工夫次第で美味しく楽しめるはず。ぜひ、ご家庭の古米を再精米で美味しくよみがえらせてみませんか?
再精米で美味しく生まれ変わる古米
再精米は、古くなったお米を美味しく食べるための有効な手段です。特に、災害備蓄米などで長期保存していたお米を消費する際にも役立ちます。話題になった「古古古米」も、工夫次第で美味しく楽しめるはず。ぜひ、ご家庭の古米を再精米で美味しくよみがえらせてみませんか?