外国で取得した運転免許証を日本のものに切り替える「外免切替」制度が、2025年10月1日から大きく変わる見込みです。警察庁がすでに改正案を公表し、施行に向けて準備を進めています。これは日本に暮らす外国人だけでなく、これから日本へ移住を考えている方々にとっても、非常に重要な動きです。
これまで比較的取得しやすいとされてきた外免切替ですが、「観光客はもう日本の免許に切り替えられないの?」「何がどう厳しくなるの?」といった疑問や不安をお持ちの方もいるでしょう。この記事では、この注目される制度変更によって、外免切替がどう変わるのかを具体的に解説します。
なぜ厳しくなるの? 増える交通事故と制度の悪用が背景に
今回の厳格化の背景には、日本の交通安全をより一層高めるという明確な目的があります。近年、外免切替制度を利用して日本の運転免許を取得した外国人による交通事故が増加傾向にあることが問題視されていました。
具体的には、以下のような状況が指摘されています。
- 交通事故の増加と深刻化: 外免切替で日本の免許を取得したドライバーによる事故件数が増えており、中には死亡事故や重傷事故といった重大なケースも含まれています。
- 日本の交通ルール理解の不足: 特に、「一時停止」「優先道路」「右折時の直進車優先」など、日本独自の、あるいは海外と異なる交通ルールや習慣への理解が不十分なまま運転しているケースが見受けられます。信号無視や一時不停止も、事故につながる要因として挙げられています。
- 制度の悪用と課題(「外免切替ツアー」の実態): これまで、観光客などの短期滞在者も、比較的容易に外免切替を利用して日本の免許を取得できていました。その結果、一部の国では、短期間で日本の免許取得を目的とする「外免切替ツアー」まで存在し、話題となりました。これは、「国際運転免許証では足りない期間、日本で車を運転したい」といった、本来の目的とは異なる利用につながる場合があり、日本の交通ルールへの十分な知識や意識がないまま運転することで、事故のリスクを高めているという指摘がありました。
こうした状況を受け、警察庁は、日本の交通環境に即した運転知識と技能を確実に持つドライバーを増やすため、外免切替制度の見直しに踏み切ったわけです。
【主要な変更点】現行制度とどう変わる?
具体的に、2025年10月1日以降の外免切替は、現行制度と比べて何が変わる予定なのでしょうか。
1. 短期滞在者は原則「外免切替」不可に! 申請は「住民票」が必須へ
現行制度(2025年9月30日まで)では、有効な外国の運転免許証を持ち、その国に3ヶ月以上滞在したことが証明できれば、観光客などの短期滞在者でも外免切替の申請が可能でした。パスポートの出入国記録やホテルなどの一時滞在証明で認められるケースもありました。
しかし、2025年10月1日以降は、この点が大きく変わる見込みです。新たな制度では、外免切替の申請者は日本に住民票を有していることが原則必須となります。これは、実質的に日本に中長期的に居住する外国人でなければ、外免切替を利用できないことを意味します。これにより、申請時に必要となる書類に日本の住民票の写しが必ず加わる予定です。
2. 知識確認(筆記試験)が「超」難化へ! 問題数5倍・合格基準9割以上
外免切替の筆記試験は、これまで「比較的易しい」とされてきました。現行制度では、わずか10問の基本的な交通ルール問題が出題され、7割以上の正解で合格でした。
これが2025年10月1日以降は、日本の新規免許取得時と同等レベルにまで厳しくなる予定です。具体的には、問題数が50問に大幅に増加し、合格基準も驚きの9割以上へと引き上げられます。出題範囲も日本の交通法規全般を網羅するよう拡大され、飲酒運転や事故時の対応といった、安全運転に直結する重要な知識がより詳細に問われることになります。
3. 技能確認(実技試験)もより厳しく! 日本の道路事情に対応へ
実技試験である技能確認についても、2025年10月1日以降は厳格化される見込みです。現行制度では基本的な運転操作や信号・標識の確認が中心でした。
しかし、新制度では、これに加えて日本の複雑な道路事情に即した項目が追加される予定です。例えば、横断歩道や踏切の安全な通過方法、交差点でのより厳密な安全確認、合図の徹底、適切な右左折の手順など、細部にわたる運転技術と安全意識が今まで以上に厳しく審査されることになります。
今後、外免切替を検討している方へ:最新情報の確認を忘れずに
今回の法改正は、2025年10月1日の施行に向けて警察庁が具体的に進めているもので、現時点では大きな修正が入る可能性は低いとされています。しかし、最終的な法律の施行には国会での手続きが必要となり、今後も詳細な情報が公表される可能性があります。
もし、ご自身やご家族、あるいは知人で外免切替を検討している方がいらっしゃる場合は、新制度施行後は手続きの難易度が大幅に上がることが予想されます。特に筆記試験の学習や実技試験の練習には、これまで以上の準備が必要となるでしょう。
現行制度での申請を検討されている場合は、各都道府県の運転免許センターの情報を確認し、早めに手続きを進めることをお勧めします。また、法改正の最終決定や細則については、引き続き警察庁や運転免許センターのウェブサイトなどで最新情報を必ず確認するようにしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 2025年10月1日より前に申請すれば、旧制度が適用されますか?
A1: はい、その通りです。ただし、外免切替の手続きには書類準備から審査、試験まで時間がかかる場合があります。申請が集中することも予想されますので、余裕をもって準備・申請することをお勧めします。
Q2: 日本に住民票がない短期滞在者は、もう日本で運転できませんか?
A2: 外免切替は原則としてできなくなります。しかし、ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証をお持ちであれば、その有効期間内(通常1年間)は日本で運転が可能です。
Q3: 知識確認(筆記試験)や技能確認(実技試験)の免除国・地域は、今後も免除されますか?
A3: 免除制度自体は維持されると見られますが、詳細については、今後発表される最新の情報を確認する必要があります。ただし、視力検査や色覚検査などの適性検査は、引き続き全員が受ける必要があります。
Q4: 日本の免許に切り替えるには、どれくらいの費用がかかりますか?
A4: 申請手数料、交付手数料、講習料など、約数千円かかります。これに加えて、外国免許証の翻訳費用などが別途必要になります。
Q5: 英語など日本語以外の言語での試験はありますか?
A5: 一部の都道府県の運転免許センターでは、英語など多言語での筆記試験が実施されています。対応言語や実施状況は地域によって異なりますので、お住まいの地域の運転免許センターに直接お問い合わせください。