「選挙に行きたいけれど、投票日は都合が悪い…」
そんな時でも、大切な一票を無駄にしないための制度があることをご存知ですか?それが「期日前投票」と「不在者投票」です。どちらも選挙期日(投票日)に投票所へ行けない人が、事前に投票できる制度ですが、その内容や利用できる状況には違いがあります。
「同じようなものでしょ?」と思っている方もいるかもしれませんが、それぞれの制度を理解することで、あなたの状況にぴったりの投票方法を見つけることができます。この記事では、期日前投票と不在者投票の基本的な違いから、対象者、手続き、そしてどちらを選ぶべきかなどについて、ご紹介します。
まずはここから!「期日前投票」とは?
期日前投票は、投票日当日に投票所へ行けない場合に、事前に投票できる最も身近な制度です。平成15年の公職選挙法改正により導入され、今では多くの方が利用しています。
どんな人が利用する?(対象となるケース)
期日前投票は、下記のような理由で投票日当日に投票所に行けない方が利用できます。
- 仕事や学業がある:投票日が休日出勤や授業、試験と重なる場合など。
- 地域行事や冠婚葬祭の予定がある:結婚式やお祭り、法事などが投票日と重なる場合。
- 旅行やレジャーの予定がある:投票日を避けて遠出する場合。
- 病気や怪我、妊娠などで体調が優れない:投票日当日の混雑を避けたい、体調に不安がある場合。
- 引っ越しなどで居住地を離れる予定がある:選挙期間中に転居を控えている、またはすでに転居したが、元の住所地で投票したい場合。
投票の手順・流れ
期日前投票は、投票日当日の投票とほとんど同じように行えます。
- 投票場所:お住まいの市区町村に設置される「期日前投票所」で投票します。市役所や区役所の庁舎内、公民館、時には商業施設内など、身近な場所に設置されます。
- 投票期間:公示日または告示日の翌日から選挙期日の前日まで、毎日投票できます。
- 手続き:期日前投票所で「宣誓書」に必要事項を記入し、投票用紙を受け取ります。あとは当日投票と同じように、投票用紙に候補者名や政党名を記入し、直接投票箱に入れます。
投票の効力
期日前投票の場合、投票を行った時点で選挙権が確定します。そのため、万が一投票後に転居や死亡などで選挙権を失ったとしても、その投票は有効となります。
場所や身体的な制約がある時に利用できる「不在者投票」とは?
不在者投票は、期日前投票では対応できないような、より特別な事情がある方が利用できる制度です。郵便や滞在地の選挙管理委員会を通じて投票するなど、その方法は多岐にわたります。
どんな人が利用する?(対象となるケース)
不在者投票は、主に以下のようなケースで利用されます。
- 名簿登録地以外の市区町村に滞在している場合
- 長期の出張や単身赴任で、住民票のある場所を離れている方。
- 帰省中などで、普段住んでいる場所とは別の市区町村にいる方。
- 旅行先で投票したい方。
- 都道府県の選挙管理委員会が指定した病院や施設に入院・入所している場合
- 病気や高齢などで、指定された病院や老人ホーム、身体障害者支援施設などに入院・入所している方。
- 重度の障害などで投票所へ行くことが困難な場合(郵便等による不在者投票)
- 身体障害者手帳、戦傷病者手帳をお持ちで、特定の重度な障害がある方。
- 介護保険法上の要介護5の認定を受けている方。
- これらの場合、自宅で郵便により投票できます。
- その他:洋上投票、南極投票、在外選挙など、特定の事情がある場合に利用できる制度もあります。
投票の手順・流れ
不在者投票は、期日前投票よりも手続きが複雑になることが多いです。
- 滞在地での投票・指定施設での投票
- まず、お住まいの市区町村の選挙管理委員会に対し、投票用紙などの必要書類を請求します。
- 請求が認められると、投票用紙などが郵送されてきます。
- 滞在地の選挙管理委員会、または指定施設内で、送られてきた投票用紙に記入し、専用の封筒に入れて封をします。
- その後、滞在地の選挙管理委員会から、または施設を通じて、投票用紙がお住まいの市区町村の選挙管理委員会に郵送され、投票が完了します。
- 郵便等による不在者投票
- 事前に「特定郵便投票者証明書」の交付を受ける必要があります。
- 投票用紙の請求期限(選挙期日の4日前まで)までに、証明書を添えて投票用紙を請求します。
- 郵送されてきた投票用紙に自宅で記入し、郵送します。
投票の効力
不在者投票の場合、投票した時点ではなく、選挙期日までに選挙権があることが前提となります。そのため、投票後に転居などで選挙権を失った場合、その投票は無効となる可能性があります。
期日前投票と不在者投票、ここが違う!
それぞれの制度の主な違いをまとめてみました。
- 対象者の範囲
- 期日前投票:投票日当日に「都合が悪い」など、比較的幅広い理由で利用できます。
- 不在者投票:名簿登録地以外に滞在している、病院や施設に入院・入所している、重い障害があるなど、より特別な事情がある方が対象です。
- 投票場所
- 期日前投票:お住まいの市区町村の期日前投票所(市役所内、公民館、商業施設など)で投票します。
- 不在者投票:滞在地の選挙管理委員会、指定病院・施設内、または自宅(郵便等)など、状況に応じて多岐にわたります。
- 投票方法
- 期日前投票:投票用紙に記入後、直接投票箱に入れます。当日投票とほぼ同じ感覚です。
- 不在者投票:多くの場合、投票用紙を専用の封筒に入れ、郵送することで投票されます。期日前投票より手続きが複雑です。
- 投票の効力
- 期日前投票:投票した時点で選挙権が認められるため、その後の状況変化(転居など)があっても有効です。
- 不在者投票:選挙期日まで選挙権があることが前提のため、その間に選挙権を失うと無効になる可能性があります。
- 利便性
- 期日前投票:当日投票に近い感覚で、比較的高い利便性があります。
- 不在者投票:特定の事情がある場合に利用でき、手続きは期日前投票より複雑になることがあります。
どちらの制度を利用すべき?あなたに合った選択のポイント
あなたの状況に合わせて、最適な投票方法を選びましょう。
- 「投票日当日に用事があるけれど、住んでいる地域でなら投票できる」 → 期日前投票が便利です。多くの場合、市役所などで手軽に済ませられます。
- 「投票日も期日前投票期間中も、住んでいる地域を離れている」 → 不在者投票(滞在地での投票)を利用します。滞在地の選挙管理委員会で手続きを進めることになります。
- 「病院や老人ホームなどの施設に入院・入所していて、外出が難しい」 → 不在者投票(指定施設での投票)が利用できます。施設内で投票できるか、施設にご確認ください。
- 「重い障害があり、投票所まで行くことが困難」 →不在者投票(郵便等による投票)が可能です。事前に市区町村の選挙管理委員会に相談し、手続きを進めてください。
早めの確認と準備が大切です。制度利用には事前の手続きや申請が必要な場合があるため、各市区町村の選挙管理委員会に確認することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1: 投票所入場券がなくても、期日前投票や不在者投票はできますか?
- A: はい、可能です。投票所入場券は、投票がスムーズに進むための整理券のようなものであり、投票の必須条件ではありません。投票所で氏名と住所を伝えて本人確認ができれば投票できます。ただし、手続きがよりスムーズになるため、持参することをおすすめします。
Q2: 17歳ですが、選挙期日までに18歳になります。期日前投票はできますか?
- A: いいえ、期日前投票はできません。期日前投票は「投票を行う時点」で選挙権があることが条件です。この場合、不在者投票(正確には「特定不在者投票」)という形での投票となります。事前に選挙管理委員会に問い合わせて手続きを確認してください。
Q3: 学生で実家を離れて生活していますが、住民票を移していません。この制度は使えますか?
- A: はい、国政選挙(衆議院議員選挙、参議院議員選挙)であれば、不在者投票を利用して投票できる可能性が高いです。
- 投票するためには、原則として住民票のある市区町村の「選挙人名簿」に登録されている必要があります。住民票を移していない場合、選挙人名簿は実家のある市区町村で作成されています。
- この場合、現在住んでいる下宿先などの市区町村の選挙管理委員会で不在者投票をすることができます。実家のある市区町村の選挙管理委員会に投票用紙などを請求し、現在地の選管で投票する形になります。
- 地方選挙(都道府県知事・議員選挙、市区町村長・議員選挙)については、原則として住民票がある場所でしか投票できません。その為、下宿先の地方選挙には投票できない場合が多いです。
- 必ず、ご自身の住民票がある市区町村の選挙管理委員会に、具体的な状況を伝えて確認してください。投票用紙の請求方法や期限など、詳細な手続きを教えてもらえます。
Q4: 期日前投票に行った後、急に投票日当日に投票所に行けることになりました。期日前投票を取り消して、当日投票できますか?
- A: いいえ、一度行った期日前投票を取り消して、当日改めて投票することはできません。期日前投票を済ませた時点で投票は有効となります。
Q5: 不在者投票を郵便で送る場合、いつまでに郵送すればいいですか?
- A: 投票用紙の請求期限は選挙期日の4日前までであることが多いですが、郵送にかかる時間を考慮し、余裕をもって請求・郵送することをおすすめします。選挙管理委員会に早めに確認しましょう。
Q6: 家族の代理で投票できますか?
- A: いいえ、原則として投票は本人のみが行うこととされています。例外として、身体が不自由で文字が書けない方のための「代理投票」や「点字投票」の制度はありますが、家族が代理で投票用紙を記入したり、代わりに投票箱に入れたりすることはできません。
Q7: インターネットでの投票はできますか?
- A: 現在の日本の公職選挙法では、インターネットや電子メールによる投票は認められていません。投票は、原則として投票所へ出向いて直接行うか、期日前投票や不在者投票といった定められた方法に限られます。
まとめ
期日前投票と不在者投票は、どちらも国民の投票機会を確保するための大切な制度です。それぞれの制度が持つ特徴を理解し、ご自身の状況に合わせて適切に利用することで、一票の重みを次世代へ繋ぐことができます。
選挙は私たちの未来を決める大切な機会です。当日行けない場合でも、「どちらの制度が自分に合っているか」を早めに確認し、ぜひ積極的に投票に参加しましょう。ご不明な点があれば、お住まいの市区町村の選挙管理委員会にお問い合わせくださいね。