「再生二期作」と聞いて、「ああ、聞いたことはあるよ」と感じた方も多いのではないでしょうか。苗を植えるのは一度きり、なのに収穫は二回できる。そんな夢のような話ですが、これまでは「収量が不安定」「本当に儲かるの?」といった不安から、なかなか踏み出せなかった方もいるかもしれません。
しかし、近年の研究でその不安を払拭する新たな技術が次々と見つかっています。今回は、単なる知識で終わらせない、明日から使える再生二期作を成功させる為の3つのカギをお伝えします。
カギその1:品種選びが成功を左右する
再生二期作の成否は、使う品種に大きく左右されます。一般的な品種だと、夏の高温で品質が落ちたり、2回目の再生力が弱かったりするからです。
そこで注目したいのが、「にじのきらめき」という品種です。
この品種は、農研機構が開発したもので、高温に強く品質が安定しています。さらに、刈り取った後の茎から新しい芽が旺盛に再生するため、2回目の収穫量も確保しやすいのが大きな特徴です。品種を「にじのきらめき」に切り替えるだけでも、再生二期作の成功率は格段に上がります。
カギその2:常識を覆す!「40cm高刈り」の威力
再生二期作を成功させる上で、最も重要なのが刈り取りの高さです。これまでは根元から刈るのが普通でしたが、再生二期作では地上から40cm程度の高い位置で刈るのがポイントです。
なぜ、こんなに高く刈るのでしょうか?
実は、稲の茎にはデンプンや糖といった養分がたっぷり蓄えられています。高く刈ることで、この養分をひこばえ(新しく出てくる芽)のために残すことができます。豊富な養分のおかげで、ひこばえの初期生育が非常に良くなり、2回目の収穫量と品質が安定するのです。
カギその3:適切な「追肥」で2回目の収穫を保証する
1回目の収穫後、残った株から新しい穂を作るためには、追加の栄養が必要です。この時期に適切な追肥を行うことで、安定した収量を確保できます。
追肥のタイミングは、1回目の稲刈り後、ひこばえの再生が始まる頃がベストです。再生後の生育を促す肥料を適切な量で与えることで、株が力強く再生し、高品質な米へとつながります。
「にじのきらめき」じゃなきゃダメ?他の品種で挑戦したい方へ
「にじのきらめき」が再生二期作に最適な品種であることは間違いありません。しかし、もちろん、他の品種でも再生二期作は可能です。ここでは、お手持ちの品種で挑戦したい方のために、品種選びのポイントをお伝えします。
再生二期作に向いている品種の3つの条件
- 高温に強いこと:夏の暑さで品質が落ちにくい品種を選びましょう。
- ひこばえの再生力が高いこと:刈り取った後に新しい芽が力強く育つ品種が望ましいです。
- 生育期間が短いこと:1回目の収穫から2回目の収穫まで、短い期間で実る品種が適しています。
「コシヒカリ」や「ヒノヒカリ」といった一般的な品種でも、再生二期作の成功事例はあります。ただし、「にじのきらめき」に比べると、再生力や高温耐性で劣ることがあるため、より慎重な管理が必要です。「40cm高刈り」や「追肥」といった技術を厳密に行うことが、成功の鍵となります。
再生二期作を始める前に!知っておきたい3つの課題点
技術が向上したとはいえ、再生二期作にはまだいくつかの課題が残されています。メリットと同時にデメリットも理解しておくことが、成功への第一歩です。
- 市場流通と販売の課題 2回目の収穫米は、1回目の新米とは異なる時期に出回るため、市場での評価や販路がまだ確立されていません。品質や食味について、消費者や流通業者に理解してもらうための努力が必要です。
- 既存の農機具との相性 日本で普及しているコンバインは、再生二期作の高刈りに対応していないものが多くあります。高刈り専用の調整や、新しい機種への投資が必要になる場合があります。
- 気候変動へのリスク 温暖化が進んでいるとはいえ、秋の急激な気温低下や、台風といった気象災害によって2回目の収量が大きく影響を受けるリスクは依然として存在します。
再生二期作を始めるための具体的な準備
「いざ、始めてみよう」と思った方の為に、最低限準備しておくべきことをまとめました。
- コンバインの確認と調整 再生二期作で必須となる「高刈り」ができるか、お手持ちのコンバインの仕様を確認しましょう。機種によっては、刈り取り高さを調整するキットやアタッチメントの装着が必要になります。
- 肥料の準備 通常の施肥計画に加え、2回目の生育を促すための追肥を用意しておきましょう。どのような肥料が適しているか、JAや肥料業者に相談することをおすすめします。
- 少量からの試験栽培 いきなり全ての圃場(ほじょう)で始めるのではなく、まずは小さな区画で試験的に栽培してみましょう。これにより、実際の収量や品質、作業性などを確認でき、リスクを抑えることができます。
- 地域の専門家への相談 お住まいの地域のJAや農業改良普及センターは、その地域での再生二期作のノウハウを持っている可能性があります。専門家のアドバイスを求めることが成功への近道です。
よくある質問(FAQ)
Q: 再生二期作は寒い地域でもできますか?
A: 再生二期作は、ひこばえが十分に成長するために秋の気温が高いことが前提となります。そのため、現在のところ、東北や北海道といった寒冷な地域での実施は難しいとされています。
Q: 2回目の収穫で使う肥料は、通常の追肥とどう違うのですか?
A: 2回目の生育を促すため、特に窒素成分を多く含んだ肥料が適しています。また、施肥のタイミングが重要であり、刈り取り後すぐに追肥を行うことが一般的です。
Q: 2回目の稲は背が低くなりますが、通常のコンバインで問題なく刈れますか?
A: 多く普及している自脱型コンバインは低刈りにも対応していますが、機種によっては対応できない場合もあります。メーカーや取扱店に確認することをお勧めします。
再生二期作を始めるための第一歩
「再生二期作」は、もはや特別な技術ではありません。温暖な地域で「にじのきらめき」を使い、「40cm高刈り」と「適切な追肥」を組み合わせれば、安定した収量を実現できます。
「田植えは1回、でも収穫は2回」
この魅力的な栽培方法を、ぜひご自身の田んぼでも試してみてはいかがでしょうか?まずは小さな区画からでも始めて、その可能性を実感してみてください。そして、お住まいの地域のJAや農業改良普及センターに相談してみることも成功への近道です。