9年間の学びが一貫!「義務教育学校」とは?その特徴とメリット | マーケターのつぶやき

9年間の学びが一貫!「義務教育学校」とは?その特徴とメリット

近年、全国的に増加している「義務教育学校」をご存じでしょうか?

この新しい学校の形は、「小学校から中学校への進学時の不適応(中1ギャップ)」の解消に加え、「少子化が進む中、小規模化する学校の教育の質の維持・向上」といった課題に対応するため、2016年に制度化されました。

義務教育学校は、小学校から中学校までの9年間の義務教育を一つの学校で行うことで、小・中学校の教員が互いの専門性を共有し、統合による安定した学校規模のもと、子どもたちの成長を途切れることなく一貫して見守ることを目的としています。従来の「小・中学校」という枠組みを超え、9年間を見通した独自のカリキュラムを組むことが可能です。

今回は、義務教育学校の基本的な仕組みから、保護者や子どもたちにとってのメリットなどについて、ご紹介します。

1. 義務教育学校の基本と仕組み

義務教育学校は、一般的な「小学校(6年)」と「中学校(3年)」の義務教育9年間を一つの学校として運営します。

組織は完全に一本化されます。 従来の小・中学校のようにそれぞれに校長や教職員組織があるのではなく、義務教育学校には校長が1人、そして1つの教職員組織が置かれます。修業年限は9年間です。

義務教育学校には、小学校に相当する前期課程(1~6年生)と、中学校に相当する後期課程(7~9年生)がありますが、9年間一貫教育のメリットを活かし、学年区分の変更が柔軟に行えます。例えば、以下のような区切りが設定されることがあります。

  • 4-3-2制: 低学年(4年)、中学年(3年)、高学年(2年)に分けて、発達段階に応じた指導を強化します。
  • 5-4制: 小学校段階(5年)で基礎を固め、中学校段階(4年)で専門性を高めることに重点を置きます。

部活動の取り扱い:大会参加は中学校と同じ

義務教育学校の後期課程(7~9年生)における部活動は、基本的に一般の中学校の部活動と同じ扱いになります。

  • 大会出場: 生徒は中体連(中学校体育連盟)などが主催する各種大会や、文化部のコンクールなどに、中学校の生徒として出場します。
  • 活動の継続性: 9年間一貫教育のメリットとして、前期課程(小学校段階)からスポーツや文化活動に系統的に親しんだ生徒が、そのまま後期課程の部活動にスムーズに移行できるため、一貫した育成が可能です。

ただし、近年進められている休日の部活動の地域移行や、複数校で合同で活動する拠点校部活動といった取り組みは、義務教育学校も一般の中学校と同様にその対象となっています。

2. 義務教育学校がもたらす主なメリット

義務教育学校の最大の価値は、従来の制度では難しかった教育上の課題解決にあります。

メリット1:中1ギャップの解消

小学校から中学校への進学時に、環境や学習内容の急な変化から不登校や成績不振につながる「中1ギャップ」が問題視されてきました。義務教育学校では、9年間同じ校舎や教職員のもとで学び続けるため、この環境変化が緩和されます。

特に、後期課程へのスムーズな移行を目的とした意図的な接続期間を設定できます。例えば、6年生から中学校の先生が授業を受け持ったり、小学校の先生が7年生の生活指導をサポートしたりするなど、きめ細かな対応が可能です。

メリット2:専門性を活かした授業の実現

中学校(後期課程)の教科担任制を、小学校段階(前期課程)の一部にも導入しやすくなります。

  • 指導の専門性向上: 中学校の教員免許を持つ教員が、理科や外国語など特定の教科を前期課程の高学年で担当することで、より専門性の高い授業を提供します。
  • 教員の負担軽減: 小学校の教員は全教科を教える負担が軽減され、それぞれの先生が専門的な指導に集中できます。

メリット3:異学年交流とリーダーシップ育成

1年生から9年生までの幅広い年齢の児童生徒が同じキャンパスで過ごします。

  • 前期課程の児童は、年上の生徒の姿を身近に見ることで、学習や進路に対する興味・関心を高めます。
  • 後期課程の生徒は、年下の面倒を見る経験を通して、責任感やリーダーシップが育成されます。

メリット4:教員の連携強化による指導力の向上 🤝

少子化による学校の小規模化が進む中、教員の目が届きにくくなったり、特定の教科の専門指導が難しくなったりする課題があります。義務教育学校は、この課題に対して効果を発揮します。

  • 専門性の相互補完: 小学校の教員は児童の生活指導や発達段階の知識に長け、中学校の教員は教科指導の専門性に長けています。一つの組織になることで、互いのノウハウや専門性を共有し合い、学校全体の指導力と対応力が向上します。
  • 安定した学校運営: 統合により一定の規模を維持できるため、学校行事や部活動の運営、多様な選択科目の提供など、教育活動の幅を維持・拡大しやすくなります。

3. 「小中一貫校」との法的な違い

義務教育学校は、同じく小中連携教育を行う「小中一貫型小学校・中学校」とは法的な位置づけが異なります。

  • 義務教育学校は、学校教育法で新設された「1つの学校」です。9年間の一貫したカリキュラムを独自に編成しやすいという特色があります。
  • 小中一貫型小学校・中学校は、組織上は「小学校と中学校の2つの学校」が独立しており、教育目標を共有し、連携して指導を行います。

義務教育学校は、一つの学校として9年間を見通した教育を徹底しやすい点で、より強い一貫教育を実現できると言えます。

義務教育学校が描く9年間の成長ストーリー

この記事では、義務教育学校の仕組みとメリットについて解説しました。義務教育学校の設置は、少子化という時代の流れの中で、子どもたちのより質の高い成長環境を実現するための選択肢です。

改めて、義務教育学校がもたらす主要なポイントをまとめます。

  • 組織・教育の一本化: 校長や教職員組織を一つにし、9年間を見通した一貫教育を可能にします。
  • 最大の効果: 小学校から中学校への進学時の「中1ギャップ」を解消します。
  • 指導の充実: 小中学校の教員が互いの専門性を共有し合い、学校全体の指導力と対応力を向上させます。
  • 部活動: 後期課程の部活動は一般の中学校と変わらず、各種大会に出場します。

義務教育学校は、子どもの成長を長期的な視点で見守り、変化の激しい現代社会を生き抜く力を育む、新しい義務教育の形として注目されています。

お住まいの地域で義務教育学校の設置が進められている場合は、ぜひその教育目標やカリキュラムを確認し、ご家庭の教育方針と照らし合わせてみてください。

FAQ:義務教育学校に関するよくある質問

Q1. 義務教育学校に入学試験はありますか?

A. 公立の義務教育学校の場合、基本的には従来の公立小中学校と同様に入学試験はありません。原則として、居住地の学区に基づいて入学することになります。ただし、一部の公立学校や私立学校では、独自の選抜方法を設けている場合があるため、詳細は各自治体や学校にご確認ください。

Q2. 義務教育学校を途中で転校・退学することはできますか?

A. はい、可能です。転居などにより学校を変わる必要がある場合は、他の小・中学校や義務教育学校に転校できます。義務教育学校は9年制ですが、学年ごとに所属する学校の種類が変わるだけで、転校に関する手続きは従来の小・中学校と大きく変わりません。

Q3. 義務教育学校の教員になるには、特別な免許が必要ですか?

A. 義務教育学校の教員は、理想としては小学校と中学校の両方の教員免許を併有していることが望ましいとされています。これにより、前期課程(小)と後期課程(中)の両方で指導にあたることが可能になります。当面の間はどちらか一方の免許だけでも勤務できますが、多くの自治体で併有を推奨・促進しています。

Q4. 義務教育学校から高校へ進学する際、不利になることはありますか?

A. いいえ、義務教育学校後期課程(7~9年生)は中学校と同じ課程であるため、高校受験や進学において不利になることは一切ありません。卒業すれば、一般の中学校卒業者と同様に高校や高等専門学校などを受験できます。