お寿司屋さんやスーパーでカンパチの切り身を見たとき、「白っぽいけど、これって白身魚でいいんだよね?」と確信を持てないことはありませんか? 実は、このカンパチ。見た目の色にだまされてはいけない、「魚の分類の常識を覆す」ちょっと秘密を持った魚なんです。この記事では、カンパチが持つ「白身魚に見えて赤身魚」という意外な正体と、プロが知る分類の基準、そしてその秘密がもたらす食感の魅力まで、深く掘り下げてご紹介します。
カンパチは「赤身魚」の仲間なんです
カンパチは、カツオやマグロと同じ赤身魚のカテゴリーに入りますが、その身の色はかなり違いますよね。
魚の分類は「身の色」だけじゃない
魚が赤身か白身かは、単に切り身の色だけで決まるわけではありません。主に、魚の筋肉に含まれる赤い色素タンパク質(ミオグロビンなど)の量で決まります。
- 赤身魚が多い理由
- カンパチはブリやヒラマサと同じく、広大な海を休みなく泳ぎ回る回遊魚です。
- 長時間の運動にはたくさんの酸素が必要になるため、筋肉に酸素を蓄える赤い色素(ミオグロビン)がたっぷり含まれています。
- カンパチの分類
- カンパチは、アジ科のブリ属というグループに属しています。
- 身の味はブリよりも上品ですが、この生態から赤身魚に分類されるのがルールです。
見た目とのギャップ!白身魚に間違われる秘密
「じゃあ、なんでカンパチの身は白っぽいんだろう?」という疑問にお答えします。
秘密①:身は淡い色、でも血合いは赤い
カンパチの身は、マグロのような真っ赤な色ではなく、透明感のある薄いピンクや白色をしています。特に新鮮なものはとてもきれいです。
しかし、切り身をよく見ると、身と濃い赤色の血合いがハッキリと分かれているのが分かります。この血合いにこそ、カンパチが赤身魚である証拠がたくさん詰まっています。
秘密②:上品な食感とさっぱりした味わい
カンパチの身は、活きがよければコリコリとした強い歯ごたえが楽しめます。また、ブリに比べて脂がしつこくなく、さっぱりとして上品な旨みがあります。
この「コリコリとした食感」や「上品さ」が、鯛やヒラメといった白身魚が持つ特徴と似ているため、「カンパチは白身魚でしょう?」と勘違いされやすいのです。
業界では「白身」と呼ばれることも
学術的には赤身魚ですが、上記のような理由から、水産市場や寿司業界の一部ではカンパチを「白身」や「青魚だけど身質が白身に近い魚」として区別して扱う慣習もあります。その為、プロの方でも「カンパチは白身だ」と表現することがあるのです。
知識を深める!カンパチと似た分類の”境界線上の魚”
カンパチのように、見た目と科学的な分類が異なる魚は他にもいます。これを知ると、あなたも魚の分類の達人です!
魚の分類の常識を覆す意外な魚たち
- サケ(鮭)
- 見た目: 鮮やかな赤色(サーモンピンク)。
- 分類: 白身魚。
- ポイント: 身の赤い色は、エビやカニが持つアスタキサンチンという色素(カロテノイド)によるものです。ミオグロビンの量は少ないため、白身魚に分類されます。
- サワラ(鰆)
- 見た目: 白っぽい/淡いピンク。
- 分類: 赤身魚。
- ポイント: カンパチと同様に回遊魚(長距離ランナー)であり、分類に必要な色素タンパク質が多く含まれているためです。身の見た目だけでは判断できません。
- ブリ(鰤)
- 見た目: 白っぽい/淡いピンク。
- 分類: 赤身魚。
- ポイント: カンパチの仲間(ブリ属)で、同じく回遊魚です。特に冬場に脂が乗ると身が白っぽくなり、さらに白身魚と間違われやすくなります。
- シマアジ(縞鯵)
- 見た目: 美しい白身。
- 分類: 赤身魚。
- ポイント: アジ科(赤身魚の仲間)であり、回遊魚であるため赤身魚です。しかし、白身魚と青魚の両方の旨みを合わせ持つ、非常に美味しい高級魚として知られます。
今日から役立つ!食卓でのカンパチの楽しみ方
カンパチの分類の知識は、魚のプロになった気分を味わえるだけでなく、実際に食卓での楽しみ方を深めてくれます。
- 再確認のポイント: カンパチは、見た目や食感は白身魚のようですが、分類上は「赤身魚」です。
- 楽しみ方のヒント: * コリコリ食感: 新鮮なカンパチは、白身魚に負けない強い歯ごたえが魅力です。刺身は少し厚めに切って、その食感を最大限に味わってみましょう。
- 上品なコク: ブリほどの強さはないものの、赤身魚らしい奥深い旨みがあります。この上品なコクは、刺身だけでなく、カルパッチョや塩焼きでも引き立ちます。
ぜひ、この知識を活かし、カンパチならではの強い歯ごたえとさっぱりとしたコクを再発見してみてくださいね。

