6月3日 17:53 トランプ関税でアメリカにスタグフレーションは起こるのか?経済への影響 | マーケターのつぶやき

トランプ関税でアメリカにスタグフレーションは起こるのか?経済への影響

2025年、トランプ前大統領が再び掲げた強硬な関税政策が注目を集めています。特に、中国製品に最大60%もの関税を課すといった「メイド・イン・アメリカ法」の導入が議論されており、経済界では「スタグフレーションを招くのではないか」との懸念が広がっています。

では、スタグフレーションとは何なのか?そして、なぜトランプ関税がその引き金になり得るのか。この記事では、経済への具体的な影響などをご紹介します。

スタグフレーションとは?簡単におさらい

スタグフレーション(stagflation)とは、「景気停滞(stagnation)」と「物価上昇(inflation)」が同時に起こる状態を指す経済用語です。通常、景気が悪化すれば需要が減るため物価も下がるものですが、スタグフレーションでは物価だけが上がり、経済成長や雇用は伸び悩みます。

この状態は、1970年代のアメリカで実際に発生しました。当時は第1次石油危機による原油価格の急騰が原因でしたが、今回も関税という「供給側ショック」が同様の効果を持つ可能性があるのです。

トランプ関税がスタグフレーションを招くメカニズム

1. 輸入品コストの上昇 → 消費者物価が上がる

関税は、輸入品に課される税金のようなもので、企業が支払うコストはそのまま商品価格に転嫁されます。例えば、中国から輸入される家電や日用品に60%の関税がかかれば、アメリカ国内の小売価格はそれに応じて上昇します。これがインフレ(物価上昇)の一因になります。

2. 原材料の高騰 → 生産コスト増加 → 雇用や投資が抑制される

原材料の多くが海外に依存している製造業では、関税の影響でコストが大きく跳ね上がります。それにより、企業は生産規模を縮小したり、従業員の雇用を控えることになり、結果的に景気が減速することになります。

3. 輸出も打撃 → 経済全体の停滞

中国などが報復関税を導入すれば、アメリカ製品の輸出も減少し、輸出産業にも悪影響が及びます。これによって、経済全体がスローダウンすることは避けられません。

実際にスタグフレーションは起こるのか?現状のアメリカ経済を分析

2025年現在、アメリカの経済成長率は鈍化傾向にあり、一部では景気後退入りが警戒されています。また、インフレ率も再び高止まりの兆しを見せており、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げに慎重な姿勢を取っています。

このような中で関税政策が追加されれば、「物価は上がるが、景気は伸びない」というスタグフレーションの典型的な構図が現実味を帯びてくるのです。

アメリカ発のスタグフレーションが世界経済に与える影響

アメリカは世界最大の経済大国であり、その金融政策や需要動向は他国に大きな影響を与えます。もしアメリカでスタグフレーションが本格化すれば、以下のようなグローバルな波及効果が予想されます。

1. 世界の輸出国にとって「需要減退」の打撃

アメリカは多くの国にとって最大の輸出先です。アメリカの景気が冷え込めば、中国・日本・ドイツ・メキシコなどの輸出依存国の経済も同時に減速します。特に、アメリカ向けの需要に依存している製造業や農業が影響を受ける可能性があります。

2. 新興国への資本流出と通貨安リスク

アメリカの金利が高止まりする場合、投資資金が新興国からアメリカに流れ、通貨安や資本流出が加速します。特に、債務が多い国では財政リスクが高まり、IMF支援などの危機も現実味を帯びます。

3. 世界的なインフレ圧力の強まり

アメリカで関税によるコストプッシュ型のインフレが進行すれば、グローバルなサプライチェーン全体でコスト上昇が波及します。特にドル建てで取引される資源や食料品の価格は、世界中で上がる恐れがあります。

パウエルFRB議長と金融政策のジレンマ

現在のFRB議長であるジェローム・パウエル氏は、物価安定と景気支援のバランスを重視しています。しかし、関税によるインフレ圧力が強まれば、金利を下げる余地は限られ、むしろ追加利上げの必要性が出てくるかもしれません。

この「金利を下げればインフレが進むが、上げれば景気が悪化する」というジレンマは、まさにスタグフレーション時に見られる最悪のパターンです。

長期的には経済再建につながる可能性も?

一方で、トランプ関税が必ずしも悪い結果をもたらすとは限りません。もし国内製造業が活性化し、サプライチェーンが強靭化すれば、長期的にはアメリカ経済の自立性や雇用の質が向上する可能性もあります。

ただし、それには企業が本気で国内回帰に投資することと、政府がインフレ対策を両立させる産業政策を展開できるかにかかっています。短期的な痛みを「未来への投資」に変えられるかが鍵となるでしょう。

スタグフレーションのリスクは「十分にある」

現時点では、トランプ関税が即座にスタグフレーションを引き起こすと断言することはできません。しかし、高い関税によって物価と景気に同時に悪影響が出る可能性は極めて高く、スタグフレーション的な傾向が現れるリスクは十分にあるといえるでしょう。

選挙戦を背景にした関税政策が、短期的な人気取りに終わるのか、それとも中長期的な経済戦略となり得るのか。今後のFRBの対応や、企業の動向にも注視が必要です。