冬の感染症対策といえば「手洗い・うがい」が当たり前ですが、実はそれだけでは不十分かもしれない……。そんな新しい視点を、先日放送された『池上彰のニュースそうだったのか!!』で知ることになりました。
番組で紹介されたのは、私たちの誰もが毎日行っている「歯磨き」と「感染症予防」の意外な関係です。
池上彰さんは、将来的には「手洗い・うがいの次に、歯磨きが加わる時代が来るかもしれない」と非常に慎重かつ興味深い表現で、この可能性を紹介されていました。単なるエチケットだと思っていた歯磨きが、実は私たちの体が持つ「バリア機能」を左右している可能性があるというのです。
なぜ今、世界的に「口の中のケア」が注目されているのか。イギリスの学術誌でも議論されたというそのメカニズムと、私たちが明日から意識すべきポイントを、番組の内容に沿って紐解いていきます。
◆ 世界の学術誌でも議論されている「口腔ケア」
番組の中で特に驚きだったのが、この内容がイギリスの学術誌(British Dental Journalなど)に掲載された研究に基づいているという点です。
古くから「お口の清潔さは健康の源」と言われてきましたが、現代の科学ではさらに踏み込み、「口腔内の細菌がインフルエンザウイルスの強力なサポーターになってしまう」というメカニズムが議論されています。
番組でも紹介されていましたが、特に注目すべきは高齢者施設などで行われた実証データです。歯科衛生士らによる専門的な口腔ケアを継続したグループでは、そうでないグループに比べて、インフルエンザの発症率が「約10分の1」にまで抑えられたという驚きの報告もあるそうです。
単なる「エチケットとしての歯磨き」の域を超え、ウイルスが喉の粘膜に取り付くための「足場」を奪うという、戦略的な予防策として世界的に注目を集め始めています。まだ「誰もが知る常識」とまでは言えませんが、科学的な視点からその重要性が裏付けられつつあることが分かります。
◆ 【番組の解説】鍵を握るのは「唾液のバリア能力」
番組で特に詳しく解説されていたのが、私たちが本来持っている「唾液の力」についてです。
唾液には、外から入ってくるウイルスと戦うための「免疫物質(IgAなど)」が含まれています。しかし、お口の中が汚れたままだと、その能力が十分に発揮できなくなってしまうというのです。
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唾液の「パワーの浪費」を防ぐ: お口の中が細菌で汚れていると、免疫物質がもともと口内にいる雑菌の処理に追われてしまいます。いわば、唾液の防御パワーが「内側の掃除」に使い果たされている状態です。
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歯磨きで「バリアを外向き」にする: 歯磨きによって口内を清潔に保つことで、唾液の免疫機能が、外から侵入しようとするウイルスへの防御にしっかりと力を注げるようになる。つまり、「歯磨きが唾液の質をサポートする」という視点が紹介されていました。
ただし、池上さんはここで非常に重要な補足もされていました。この「歯磨きで唾液のバリア機能が強化される」というロジックそのものは、実はまだ科学的に100%解明されているわけではない、ということです。
あくまで有力な考え方の一つとして紹介されていましたが、未解明な部分があるからこそ、池上さんも「将来的に常識になるかもしれない」という慎重な表現を使われていたのが印象的でした。
◆ ウイルスが侵入しやすい環境を避けるために
ここで、もう少し詳しくメカニズムを掘り下げてみましょう。お口の細菌を減らすことは、単に唾液を助けるだけでなく、「ウイルスが侵入しやすい環境をあらかじめ作らせない」ことにも繋がると考えられています。
インフルエンザウイルスが私たちの喉などの粘膜から細胞へ侵入しようとする際、実はウイルス単体の力だけでは突破が難しい場合もあります。そこで重要になるのが、お口の中に潜む細菌との関係です。
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ウイルスの「侵入を助ける物質」: 口内に細菌が多いと、その菌たちが粘膜のガードを弱めてしまうような物質を出します。これがウイルスの表面にある「鍵」のような機能を活性化させてしまい、結果としてウイルスが細胞内に入り込みやすい状態を作ってしまうと言われています。
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「共犯関係」を断つ歯磨き: 丁寧な歯磨きで細菌の数を抑えておくことは、いわばウイルスの「侵入の手助け」をさせないための大切な準備です。ウイルスが粘膜に取り付くための「足場」をあらかじめ奪っておくという考え方です。
番組で紹介されていた「唾液のバリア」を内側から守る視点と、この「ウイルスの侵入経路を塞ぐ」という視点をあわせて考えると、口腔ケアがいかに多角的な守りに関わっているかが分かります。
◆ 番組を参考に意識したい「日々の工夫」
池上さんの解説をヒントに、日常生活で無理なく、かつ効果的に取り入れられそうなポイントを深掘りしてまとめました。
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起床後すぐのケア:最優先で菌をリセット 寝ている間は唾液の分泌が減り、お口の中の細菌が爆発的に増える時間帯です。朝起きてすぐに歯磨き(またはうがい)をすることで、増殖した菌を体内に取り込む前にリセットし、唾液が朝から本来のバリア機能を発揮しやすい環境を整えます。
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舌のケア:細菌の「溜まり場」を掃除する 細菌は歯だけでなく、舌の表面(舌苔)にも多く潜んでいます。ここが汚れていると、いくら歯を磨いても口内の細菌数は減りにくいため、専用の舌ブラシなどで「優しく」掃除することが大切です。※粘膜を傷つけないよう、力を入れすぎないのがポイントです。
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こまめな水分補給:喉を「乾燥」から守る 唾液の量と質を保つためには、体の水分量も重要です。一気に飲むのではなく、こまめに少しずつ水分を摂ることで喉の粘膜を湿らせ、唾液に含まれる免疫物質が働き続けられる状態をキープします。
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就寝前の丁寧な歯磨き:菌の増殖を未然に防ぐ もっとも細菌が増えやすい就寝中の環境をあらかじめ整えておくために、夜の歯磨きは特に念入りに行うことが、翌朝の口内環境の改善、ひいては防御力の維持に繋がります。
◆ 口内ケアにまつわる「よくある疑問(FAQ)」
Q. 歯磨きをすれば、インフルエンザに絶対かからないのですか?
A. 残念ながら「絶対に防げる」というわけではありません。池上さんも番組で慎重に表現されていた通り、歯磨きはあくまで「バリア機能をサポートする」一つの手段です。手洗いうがいと同様に、リスクを下げるための習慣の一つとして捉えるのが適切です。
Q. 市販のマウスウォッシュ(洗口液)でも効果はありますか?
A. 歯磨きの補助として、お口の中の細菌を減らす助けにはなります。ただし、歯の表面にこびりついた汚れ(プラーク)は物理的に磨かないと落ちにくいため、歯磨きと併用するのが望ましいと考えられています。
Q. 1日に何回磨くのがベストですか?
A. 回数も大切ですが、特に「タイミング」が重要です。菌が最も増えている「起床直後」と、菌の増殖を抑えたい「就寝前」の2回は特に丁寧に行うことが、効率的なケアに繋がります。
◆ これからの「新しい予防習慣」との付き合い方
番組の最後で池上さんは、将来的には「手洗い・うがい・歯磨き」がセットの予防習慣になる日が来るかもしれない、といった趣旨のお話をされていました。
現状ではまだ「歯磨きでインフルエンザが完全に防げる」と断定できる段階ではありません。しかし、今回紹介された「唾液のバリア」を助け、ウイルスが活動しにくい環境を整えるという視点は、私たちの健康を守るための心強いヒントになります。
「新常識」と呼ぶにはまだ早いかもしれませんが、これまでの手洗い・うがいに「丁寧な口内ケア」をそっと付け加えてみる。そんな小さな積み重ねが、自分や大切な家族を守る新しいスタンダードになっていくのかもしれません。
まずは明日の朝、起きてすぐの「リセット歯磨き」から、新しい体調管理を始めてみてはいかがでしょうか。

