――なし崩しの『全面解禁』。2月8日、私たちは何を信じればいいのか――
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」 今、永田町で起きていることは、この言葉そのものかもしれません。
2024年、日本中が憤った「政治とカネ」の問題。前回の選挙では多くの議員が非公認となり、国民の厳しい怒りが示されたはずでした。しかし、それからわずか1年あまり。現在進行中の衆院選で私たちの目の前にあるのは、かつての「裏金議員」たちが再び自民党の看板を背負い、敗者復活のチャンス(比例重複)まで手に入れた姿です。
2026年1月1日から新しい法律(改正政治資金規正法)は動き出しました。しかし、仕組みが変われば、過去の疑惑はすべて「清算」されたことになるのでしょうか?
今回の選挙は、単なる候補者選びではありません。「一度失われた政治への信頼を、いつ、どのタイミングで取り戻したと判断するか」――私たちの倫理観そのものが試されています。
⚠️ 今、起きている「方針転換」の事実
今回の選挙において、自民党執行部(高市政権)は「前回選で国民の審判は受けている」として、事実上の「全面解禁」に踏み切りました。その実態は、かつての厳しい姿勢とは大きく異なります。
◆ 「非公認」から「党の顔」への回帰と、その狙い
前回、世論の猛反発を受けて「無所属」での戦いを強いられた候補者たちが、今回は一転して党の正式な「公認」を得ました。これは党が組織を挙げて彼らを支援するという「公的な免罪符」を与えたに等しい行為です。
◆ 「比例重複」というセーフティネットの復活
最も議論を呼んでいるのが、小選挙区と比例代表の重複立候補の解禁です。前回は「裏金議員に比例復活の甘えは許さない」と制限されましたが、今回はこれが撤廃されました。「選挙区で有権者に拒絶されても、党の票で救い上げる」という仕組みの復活に対し、野党側は「みそぎの無効化だ」と反発を強めています。
🏛️ なぜ「今」方針転換されたのか? ――自民党が掲げる公認の理由
このタイミングで方針を「原則」に戻した根拠として、党側は主に以下の3点を挙げています。
◆ 改正政治資金規正法の本格施行(2026年1月〜)
1月1日より、議員本人の責任をより厳しく問う「連座制」を柱とした改正法が施行されました。「再発防止の法的枠組みが整った」とし、これを機に前回の暫定的な制限を継続する必要はなくなったという法的区切りを強調しています。
◆ 「二重の処罰」の回避とみそぎの完了
対象議員がすでに「党内処分」を終えていること、さらに前回の選挙で非公認という厳しい社会的制裁を受けたことを挙げ、「一定のけじめは既についた。これ以上の制限は二重処罰に近い」との認識を示しています。
◆ 国家の難局における「人材の有効活用」
高市首相は「みそぎが済んだと受け止めてはいない」としつつも、厳しい国際情勢等を背景に「専門知識を持つ人材にはもう一度働くチャンスを与えてほしい」と言及。政治家としての能力を優先すべきだという理屈を展開しています。
🕵️ 徹底追及:方針転換の裏に透ける「実利」と「妥協」
一方で、これら党側の説明に対し、専門家やメディアからは「法改正とは別の切実な裏事情」が指摘されています。
◆ 「勝てる候補」を外せない議席死守の論理
高市政権にとって、今回の選挙は負けられない戦いです。批判のリスクを冒してでも、地元で圧倒的な集票力を持つベテラン議員を取り込み、一議席でも多く積み上げたいという実利優先の姿勢が透けて見えます。
◆ 党内融和というパワーバランスの優先
前回の厳しい処分は、旧安倍派を中心に深刻な亀裂を生みました。今回の「全面解禁」は、党内の不満を抑え込んで政権基盤を安定させるための「政治的妥協」という側面も否定できません。
◆ 「未来のルール」で「過去」を上書きする構図
新法はあくまで「未来」のルールであり、消えた資金の使い道など「過去」の真相解明は置き去りのままです。問題を解決したから方針転換したのではなく、「新制度の開始を免罪符にして、問題を過去のものとして塗りつぶそうとしている」のが実態と言わざるを得ません。
📋 「実質的な脱税」との批判を背負う、裏金立候補者一覧
専門家からは、収支報告書に記載せず個人の「隠し財産」としていた資金は、政治資金ではなく「雑所得」として課税対象にすべきであり、不記載は実質的な所得隠し(脱税)にあたるとの厳しい声が上がっています。
納税の義務を棚上げにしたまま、今回「公認」や「比例復活」の道を得て立候補しているのは、以下の44名です。
【党公認:小選挙区から「比例復活」も狙う主な候補】
不記載額が大きく、かつ今回「公認+比例重複」という厚遇を受けている候補者たちです。
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萩生田 光一(東京24区):不記載額 2,728万円
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武田 良太(福岡11区):不記載額 1,926万円
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平沢 勝栄(東京17区):不記載額 1,817万円
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簗 和生(栃木3区):不記載額 1,746万円
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松野 博一(千葉3区):不記載額 1,051万円
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高木 毅(福井2区):不記載額 1,019万円
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西村 康稔(兵庫9区):不記載額 1,000万円
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大塚 拓(埼玉9区):不記載額 994万円
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和田 義明(道5区):不記載額 990万円
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柴山 昌彦(埼玉8区):不記載額 896万円
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丸川 珠代(東京7区):不記載額 822万円
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西村 明宏(宮城3区):不記載額 554万円
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下村 博文(東京11区):不記載額 476万円
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ほか、計38名。
【党公認:批判の届きにくい「比例単独」での候補】
小選挙区での直接の審判を避け、党の得票のみで議席獲得を目指す5名です。
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三ツ林 裕巳(北関東):不記載額 2,952万円
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堀井 学(北海道):不記載額 2,196万円
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杉田 水脈(中国):不記載額 1,564万円
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宗清 皇一(近畿):不記載額 1,408万円
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小田原 潔(東京):不記載額 1,240万円
【無所属(自民党県連が「支持」を決定)】
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世耕 弘成(和歌山2区):不記載額 1,542万円 形式上は無所属ですが、自民党県連が対立候補を立てず世耕氏を「支持」。事実上、党の組織票を独占する形での復権を狙います。
📢 有権者の問い:何を基準に選ぶべきか?
2月8日の投開票日に向けて、私たちは単なる「政策の是非」を超えた、極めて本質的な判断を迫られています。今回の争点を以下の三つの視点で深掘りします。
1. 「能力」の定義をどう捉えるか
党側は「経験豊富な人材の活用」を掲げますが、これには根底から疑問の声が上がっています。
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党の主張: 「外交や経済の難局において、当選回数を重ねたベテランの調整力や知見を失うのは国益に反する」という論理。
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国民の疑問: 「正攻法で資金を管理し、法を遵守しながら政治活動を維持する実力」がなかったからこそ、裏金という不透明な手段に頼ったのではないか。法の網を潜り抜け、納税の義務すら曖昧にする姿勢は、政治家としての「能力欠如」そのものではないか。
2. 「実質的な脱税」という不公平を許せるか
今回の選挙は、国民の「納税者としての倫理観」が試される場でもあります。
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庶民の現実: インボイス制度の導入や物価高の中、国民は1円単位の領収書を管理し、真面目に納税しています。
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裏金議員の特権: 数千万単位の「所得隠し」を政治活動費という言葉でうやむやにし、修正申告のみで「みそぎ」を済ませようとする不条理。この「特権階級の脱税」とも言える構図を、今回の1票で追認するのか、それとも拒絶するのか。
3. 「選挙制度のハック」を容認するか
前回制限された「比例重複」や、実質的な「党の組織票一本化(世耕氏の例など)」という手法についてです。
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党の論理: 「選挙は勝つことが全て。勝てる候補を公認・支援するのは政党として当然の判断」という議席死守の姿勢。
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有権者の視点: 落選しても救われる「比例の保険」をかける姿勢は、有権者の「NO」という審判を無効化する制度の悪用ではないか。この「なし崩し的なルール変更」が、将来の政治不祥事の免罪符になるリスクをどう考えるか。
🖋️ あなたの1票が「未来の基準」を決める
今回の選挙で、裏金事件に関係した候補者が大挙して当選すれば、それは今後、「時間が経てば、脱税まがいの不祥事もリセットできる」という悪しき前例を国民が認めたことになります。
「裏金をしなければ維持できない政治活動」は、本当に国民のための政治でしょうか。 「法の番人」であるべき政治家が、自ら法を軽視する姿に「実力」を見出せるでしょうか。
2月8日。私たちが投じるのは、単なる一候補者の氏名ではありません。「日本の政治家には、最低限どの程度の倫理観が必要か」という、この国の民主主義の品格を決める一票です。
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