私たち有権者が問うべきこと
物価高、少子化、災害、戦争不安——国民の暮らしが揺らぐ中で、本当に必要なのは「政治と国民が向き合うこと」ではないでしょうか。しかし現実には、選挙で選ばれたはずの現役議員たちから、あまりにずれた発言が飛び出しています。
この記事では、現職の自民党議員による近年の“炎上発言”を通じて、今の政権与党と私たち有権者との間に横たわる深刻なギャップを明らかにします。
自民党幹部による“国民感覚とズレた発言”集
江藤拓 元農水大臣
「米は売れるほどある」発言(2025年5月)
江藤氏は2025年5月、米価高騰や買いだめの動きが報じられる中、「米は売れるほどある」と述べ、需給逼迫を否定しました。この発言は、現場で米が入手しづらくなっている消費者の実感と乖離しているとして批判を浴びました。農水省の備蓄米放出や価格高騰への対策が遅れる中でのこの発言は、「危機感がない」との声を招きました。
出典:Yahoo!ニュース
「うちの地元は減反やってない」発言(2019年10月)
農業政策に関する国会答弁で「うちの地元は減反なんてやってない」と発言。農林水産大臣としての制度理解や立場を疑問視する声が広がりました。減反政策が全国的に実施されていた時期にこのような発言をしたことで、「制度への認識が浅すぎる」と批判されました。
鈴木俊一 前財務大臣(現・自民党総務会長)
「所得税減税と防衛増税は矛盾しない」発言(2023年10月)
鈴木氏は2023年10月、政府がまとめる経済対策について、物価対策としての所得税減税と、防衛力強化のための増税の議論は「矛盾しない」との認識を示しました。この発言は、増税と減税を同時に進める政府の方針に対し、国民の理解が得られるのか疑問視されました。
出典:TBS NEWS DIG(2023年10月)
「防衛増税はお願いしなければならない」発言(2022年12月)
2022年12月、鈴木氏は防衛費の財源について、「財源の確保に向けて、税制でお願いしなければならないと考えている」と述べ、国債による対応には否定的な見解を示しました。この発言は、増税による国民負担増への懸念を呼びました。
出典:朝日新聞(2022年12月)
麻生太郎 自民党副総裁
「防衛増税、国民の理解得た」発言(2023年1月)
麻生氏は2023年1月、地元・福岡県内の講演で、防衛費の倍増と増税について、「多くの国民の理解を得た」と述べました。しかし、実際には増税に対する反対意見も多く、国民の理解を得たとの認識には疑問の声が上がりました。
出典:読売新聞(2023年1月)
世耕弘成 元自民党参院幹事長
「還流を認識していたら是正進言した」発言(2024年3月)
世耕氏は2024年3月、派閥からの資金還流について、「今回の事態が明らかになるまで自分の団体が還付金を受け取っているという意識がなかった」と釈明しました。また、「もっと早く問題意識を持っていれば歴代会長に是正を進言できたはずだった」と語り、派閥の慣行を見過ごしていた責任について「痛恨の思い」と述べました。
出典:東京新聞(2024年3月)
「還流復活の経緯はわからない」発言(2024年3月)
2022年4月に安倍元首相の指示で廃止されたとされる還流が、その後再開された件について、世耕氏は「誰が決めたのか、私自身が知りたい」と述べ、当時の幹部会合の詳細については「記憶がない」としています。この発言は、派閥運営の不透明さを象徴するものとして批判を呼びました。
出典:朝日新聞(2024年3月)
長谷川岳 自民党参議院議員(北海道選出)
「機内での横柄な態度」指摘(2024年3月)
2024年3月、演歌歌手の吉幾三氏がYouTubeチャンネルで、航空機のファーストクラス搭乗時に国会議員による横柄な振る舞いを告発しました。後にその議員が長谷川岳氏であることが明かされ、注目を集めました。匿名の航空会社客室乗務員からの手紙によると、長谷川氏は搭乗のたびに「要注意人物」として事前に共有される存在で、客室乗務員へのクレームが常態化していたといいます。この問題行動はSNSなどでも拡散され、国会議員としての品格が問われました。
出典:産経新聞(2024年3月)
「官僚や市職員への高圧的態度」問題(過去複数年)
長谷川氏はこれまでも、中央省庁の官僚や地方自治体職員に対して高圧的・威圧的な態度を取ってきたと複数の報道で指摘されています。とくに札幌市職員への強い叱責や、政策説明を受ける際の一方的な詰問姿勢が問題視されており、省庁関係者からは「関わりたくない議員」と評されることもあると言われています。これらの行動は長期にわたって繰り返されていたとされ、近年の機内トラブルを契機に再び注目を集めました。
出典:毎日新聞(2024年7月)
萩生田光一 自民党衆議院議員(東京都第24区選出)
「身の丈」発言による炎上(2019年10月)
2019年10月、文部科学大臣を務めていた萩生田氏は、大学入学共通テストへの英語民間試験導入をめぐり、「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と発言。この発言は、経済格差による受験機会の不平等を容認していると受け取られ、受験生や教育関係者を中心に大きな批判を招きました。世論の反発を受け、政府は同制度の導入延期を決定しました。
出典:Yahoo!ニュース(2019年10月)
統一教会との関係(2022年)
2022年、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との政治家の関係が次々と明るみに出る中、萩生田氏が同団体の関連イベントに出席していたことが判明。本人も出席の事実を認め、「政治的な意図はなかった」と釈明したものの、旧統一教会との関係を持った自民党幹部としての立場に批判が集まりました。特に安倍元首相銃撃事件をきっかけに、宗教団体と政治の距離感への社会的関心が高まる中での発覚でした。
出典:日本経済新聞(2022年10月)
裏金問題での巨額不記載と東京都連の関与疑惑(2023年~2024年)
自民党安倍派の中心メンバーである萩生田氏は、派閥からパーティー券収入のキックバック(裏金)を受け取りながら、自らの政治資金収支報告書に記載していなかったとして批判を受けました。その総額は約4000万円以上と報じられ、派内でも極めて高額であることから、責任の重さが指摘されました。本人は「裏金という認識はない」と述べ辞任を否定していましたが、後に自民党の選挙対策委員長を辞任しました。
さらに、2024年には自民党東京都連でも、収支報告書に記載のない「キックバック構造」があったことが明らかになりました。萩生田氏はこの時点で東京都連の会長職を辞任していましたが、かつて代表を務めていた経緯があるため、安倍派と都連の類似する裏金構造において「両方に関与していた可能性が高いのでは」との疑念も浮上しています。
出典:東京新聞(2024年12月)
萩生田氏は2024年の衆議院選挙で再選を果たしましたが、裏金問題や旧統一教会との関係について十分な説明責任を果たしておらず、政治倫理上の「禊が済んだ」とは言いがたい状況が続いています。選挙結果と信頼回復を同一視すべきではないとの批判も根強くあります。
中曽根康隆 衆議院議員(元青年局長)/平沼正二郎 衆議院議員(元青年局長代理)
「コンパニオン接待パーティー問題と即時復帰」疑惑(2023年10月〜2024年春)
2023年10月、自民党青年局の研修会において、露出度の高い衣装のコンパニオンを呼んでのパーティーが行われ、参加者が紙幣を口移しで渡すなどの不適切行為が明らかになりました。この件で、当時の青年局長だった中曽根康隆議員と、局長代理だった平沼正二郎議員がそれぞれ役職を辞任。しかし、その後2024年春には両名とも役職に復帰、または同等以上の要職に就任したとされ、党内処分の甘さに対する批判が相次ぎました。
この件は自民党の若手議員におけるモラル意識の低さや、身内への処分の軽さを象徴する事例として注目されました。
岸信千世 衆議院議員(山口2区選出)
「家系図掲載による世襲批判」騒動(2023年2月)
2023年2月、岸信千世氏は自身の公式サイトに、祖父・岸信介元首相や伯父・安倍晋三元首相を含む家系図を掲載。この内容が「女性が登場しない」「世襲を誇示している」などとSNSで批判を集め、メディアでも取り上げられました。世襲政治の象徴として強い反発を招いたため、家系図は後に削除されました。
出典:朝日新聞(2023年2月)
「政策内容の“父親コピー”とサイト閉鎖」問題(2023年2月)
同年2月には、岸氏の公式サイトに掲載された政策が、父・岸信夫氏のものとほぼ同じ内容であったことが指摘されました。これにより、政治家としての独自性や見識に疑問が呈され、「世襲に頼るだけで中身が伴っていない」とする批判が高まりました。その後、公式サイトは一時「メンテナンス中」となり、該当ページは非公開となりました。
出典:NEWSポストセブン(2023年2月)
これらの発言や行動は、国民の生活実感とかけ離れたものであり、政治家と国民との間にある意識のズレを浮き彫りにしています。有権者として、これらの発言を踏まえ、次の選挙での判断材料とすることが重要です。
「どうせ変わらない」は本当か?——私たちが動かなければ、何も変わらない
「政治家なんてみんな同じ」「誰に投票しても変わらない」——こうした言葉がつい口から出るのは当然です。しかし、問題発言を繰り返す政治家たちが選ばれ続ける限り、本当に“変わらない”のは、むしろ私たちの側の行動なのかもしれません。
投票は、未来を選ぶ唯一の手段です。そして一人ひとりの一票が、政治の空気を変える力になります。
国民の声を届かせるのは、あなたの一票
国民との感覚のズレを放置したままでは、政治はますます“空中戦”になります。現役の与党議員たちがどれほど現実から乖離しているのかを知ること。そして、次の選挙で「誰に託すか」を自分の意思で決めること。
それこそが、私たち有権者にできる最初の一歩ではないでしょうか。