6月3日 17:53 【荷物が届かない?】「2024年問題」って何?私たちの生活はどう変わる?物流の危機をわかりやすく解説 | マーケターのつぶやき

【荷物が届かない?】「2024年問題」って何?私たちの生活はどう変わる?物流の危機をわかりやすく解説

最近、「2024年問題」という言葉を耳にすることが増えました。なんとなく「物流が大変になる」というイメージがあるかもしれませんが、具体的に何が問題で、私たちの生活にどう影響するのか、まだよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、日本の物流業界が直面するこの「2024年問題」について、その原因から、私たちの暮らしにどんな影響があるのか、そして私たち一人ひとりに何ができるのかを、分かりやすく解説します。

そもそも「2024年問題」って何? なぜ話題になっているの?

2024年問題とは、2024年4月1日から、トラックドライバーの労働時間に関する規制が強化されたことで、物流業界全体に大きな影響が出ると懸念されている問題の総称です。

この規制強化の背景には、トラックドライバーの過酷な労働実態がありました。これまで日本の物流を支えてきたドライバーたちは、1日13時間、時には15時間を超えるような長時間労働や、連日自宅に帰れない長距離運行が常態化していました。運転時間だけでなく、荷物の積み下ろしや、指定された場所で荷物が積み込まれるのを待つ「荷待ち時間」なども長く、拘束時間が非常に長いのが特徴です。

こうした働き方は、ドライバーの睡眠不足疲労の蓄積健康問題(腰痛や生活習慣病など)を引き起こし、交通事故のリスクも高める要因となっていました。さらに、過酷な労働条件にもかかわらず、給与水準が低い傾向にあったため、若年層のなり手が少なく、ドライバーの高齢化と人手不足が年々深刻になっていたのです。

このような状況を改善し、ドライバーの健康と安全を守るため、働き方改革関連法によって、ドライバーの年間時間外労働時間960時間に制限されることになったのです。

「労働時間が制限されるのは良いことじゃないの?」と感じるかもしれません。確かに、ドライバーの健康や安全を守るためには非常に重要なことです。しかし、この規制強化が、同時に物流業界に深刻な課題を突きつけているのです。

「2024年問題」で何が問題なの? 3つの主要な課題

トラックドライバーの労働時間規制が強化されることで、主に以下の3つの大きな問題が懸念されています。

  1. 「運べない」問題(輸送能力の低下) これまで長時間労働で運んでいた荷物を、同じ時間で運べなくなるため、全体の輸送できる量が減少します。例えば、1人のドライバーが往復で運んでいた長距離の荷物が、途中で別のドライバーに交代しないと運べなくなるなど、これまで通りの効率で運べなくなるのです。これにより、荷物が「運べない」「運びきれない」事態が生じる可能性があります。

  2. 「人手不足」問題の深刻化 労働時間が短縮されることで、これまでと同じ量の荷物を運ぶには、より多くのドライバーが必要になります。しかし、物流業界はもともと高齢化が進み、若年層のなり手も少ない人手不足が深刻な業界です。さらに労働時間が減ると、収入が減少するドライバーも出てくる可能性があり、ドライバー離れに拍車がかかることも懸念されています。

  3. 「コスト増」問題(運賃上昇) 輸送能力が低下し、さらにドライバーの確保が難しくなれば、運送会社は人件費や運賃を見直さざるを得ません。これまで安価に運送できていた荷物も、今後は運賃が上昇する可能性があります。この物流コストの上昇は、最終的に商品やサービスの価格に転嫁され、私たちの暮らしに影響するかもしれません。

私たちの暮らしにどう影響する? 身近な変化を予測

2024年問題」は、物流の根幹を揺るがす問題です。そのため、私たちの日常生活にも様々な形で影響が及ぶ可能性があります。

  • 宅配便の配達が遅れる・送料が上がる? 一番身近に感じやすいのが、宅配便です。長距離輸送や翌日配達などが難しくなることで、荷物の配達にこれまでより時間がかかったり、日時指定がしにくくなったりする可能性があります。また、運送会社のコスト増に伴い、宅配便の送料が値上げされることも考えられます。これはゆうパックだけでなく、ヤマト運輸佐川急便といった主要なサービスにも共通して起こりうる変化です。
  • スーパーの商品棚から商品が消える? 極端な話ですが、新鮮な食料品や日用品は、常に全国の工場や市場からトラックで運ばれてきています。もし輸送能力が大幅に低下すれば、一時的に特定の商品がお店に並ばなくなるなど、品薄になる可能性もゼロではありません。
  • 建設資材や部品が届かない? 工場で使う部品や建築現場の資材などもトラックで運ばれます。これらが滞れば、私たちの身の回りにある様々な製品の製造や、家の建設などが遅れる可能性もあります。
  • 引越しが難しくなる? 繁忙期には、「引越し難民」という言葉も聞かれるように、引越し業者のトラックやドライバーの確保がより一層難しくなるかもしれません。

企業や業界はどんな対策をしているの?

物流業界も、この大きな問題に対して手をこまねいているわけではありません。様々な対策が進められています。

  • 輸送効率の向上:
    • ダブル連結トラック: 1台のトラックでより多くの荷物を運べるように、長いトレーラーを2台連結した大型トラックの導入が進められています。
    • 共同配送: 複数の会社の荷物をまとめて同じトラックで運ぶことで、トラックの台数自体を減らし、効率化を図ります。
  • 労働環境の改善:
    • 賃金アップ: ドライバーの給与を上げ、魅力を高めることで、人材確保を目指します。
    • 労働環境の改善: 休憩施設の充実や、ITを活用した配送ルートの最適化など、ドライバーが働きやすい環境作りが進められています。
  • DX(デジタル変革)の推進: AIによる最適なルート選定や、ロボットによる倉庫作業の自動化など、テクノロジーを活用して人手に頼る部分を減らし、効率化を図ります。
  • モーダルシフト: 長距離輸送をトラックだけでなく、鉄道や船舶などの輸送手段に切り替えることで、ドライバーの負担軽減と環境負荷の低減を目指します。

私たち一人ひとりにできること

2024年問題」は、物流に関わる私たち一人ひとりの行動も意識を変えるきっかけになります。

  • 置き配を活用する: 家にいなくても荷物を受け取れる「置き配」は、ドライバーの再配達の負担を減らし、効率的な配達を助けます。宅配ボックスの利用も有効です。
  • 再配達を減らす工夫をする: 確実に受け取れる時間帯を指定したり、宅配ボックスを活用したりするなど、一度で荷物を受け取れるように協力しましょう。
  • 時間に余裕を持った荷物の発送・受け取り: 急ぎの荷物でない限り、これまでより少し時間に余裕を持って発送したり、受け取りを計画したりすることで、物流の負荷軽減に貢献できます。
  • 「送料無料」の意識を見直す: 「送料無料」は、運送コストがどこかで負担されていることを意味します。適切な配送料を支払うことは、物流を支える大切な取り組みです。

よくある質問(Q&A)

Q1: 「2024年問題」で、具体的にどんな荷物が遅くなりますか?

A1: 長距離輸送を伴う荷物全般に影響が出る可能性があります。特に、これまで翌日配達が可能だった地域への荷物や、ゆうパック宅配便などの個人向け荷物、企業の間の部品・資材輸送なども影響を受ける可能性があります。

Q2: 宅配便の送料はどれくらい上がりますか?

A2: 具体的な値上げ幅は各運送会社の判断によりますが、人件費燃料費輸送効率の低下などにより、全体的に配送料が上昇傾向にあると予測されています。

Q3: 物流業界以外にも影響はありますか?

A3: はい。物流は経済の「血液」とも言われるため、商品の製造から小売、建設、医療など、あらゆる産業に間接的な影響が出ます。商品価格の上昇や、サービスの提供遅延などが考えられます。

Q4: ドライバーの労働環境は本当に改善されますか?

A4: 規制強化により、長時間労働は減ると考えられます。しかし、それだけではドライバー不足は解消されないため、各企業は賃上げや職場の魅力向上など、複合的な対策を進めています。

「2024年問題」はみんなで乗り越える社会課題

2024年問題は、物流の安定性だけでなく、私たちの生活を支えるインフラ全体に関わる大きな課題です。ドライバー労働環境を守りつつ、持続可能な物流システムを構築するためには、業界の努力はもちろんのこと、私たち消費者一人ひとりの理解と協力が不可欠です。 この問題は、医療業界など他の多くの産業でも同様に直面しており、日本全体が協力して乗り越えるべき社会課題です。(医療の2024年問題についても読んでみる

この問題を知り、少しでも意識して行動することで、未来の物流をより良くしていくことに貢献できるはずです。