6月3日 17:53 日本郵便の「トラック停止命令」で私たちの郵便・ゆうパックはどうなる? 物流の裏側で何が起きているのか | マーケターのつぶやき

日本郵便の「トラック停止命令」で私たちの郵便・ゆうパックはどうなる? 物流の裏側で何が起きているのか

「日本郵便のトラックが使えなくなるらしい」――そんなニュースを耳にして、自分の郵便やゆうパックがどうなるのか、少し不安に感じている方もいるかもしれません。

実は、日本郵便は先日、国土交通省から非常に重い行政処分を受けました。これは私たちの郵便物の配達物流影響を及ぼす可能性があります。今回は、この処分がなぜ下されたのか、そして私たちの生活にどう影響するのかなどについて、ご紹介します。

なぜ?「点呼サボり」が重大な問題になった理由

まず、なぜ日本郵便が行政処分を受けたのか、その理由から見ていきましょう。

問題となったのは、全国の郵便局で義務付けられている「点呼(てんこ)」が適切に行われていなかったことです。点呼とは、ドライバーが出発する前に、飲酒していないか、体調は悪くないかなどを管理者が直接確認するという、非常に大切な安全確認です。

これが、多くの郵便局で形だけ行われていたり、ひどい場合は全く行われていなかったのに「実施した」とウソの記録が残されていたことが判明しました。

「たかが点呼」と思うかもしれませんが、これは飲酒運転などの重大な事故を防ぐための、ドライバーと私たちの命を守る重要なルールです。これをサボっていたことは、企業として安全管理を怠っていたと見なされ、極めて重大なコンプライアンス違反として、国土交通省から厳しい処分が下されることになったのです。

重すぎる処分!「運送事業許可取り消し」で何が変わる?

今回、日本郵便が受けたのは、貨物自動車運送事業の「許可取り消し」という、最も重い行政処分です。これにより、日本郵便が所有する約2500台のトラックやワンボックス車が、今後5年間、郵便物やゆうパックを運ぶために使えなくなります。

「え、じゃあ郵便やゆうパックが届かなくなるの!?」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。すぐに郵便やゆうパックが届かなくなるわけではありません。

では、何がどう変わるのでしょうか?

【影響1】遠くへの荷物やゆうパックの配達に影響が?

今回使えなくなるトラックは、主に全国の郵便局や物流拠点の間で、大量の郵便物やゆうパックを長距離運ぶ「幹線輸送」という重要な役割を担っていました。

これが使えなくなることで、日本郵便は別の方法で荷物を運ばなければなりません。具体的には、以下の対応を進めると見られています。

  • 子会社や他の運送会社に「丸投げ」: 日本郵便の子会社である「日本郵便輸送」や、ヤマト運輸、佐川急便のような民間の運送会社に、これまで自社で運んでいた荷物の輸送を委託します。
  • 代替手段の確保: 短期間でこれだけの大量の荷物を引き受けてくれる会社を見つけ、スムーズに切り替えるのは至難の業です。そのため、一時的に荷物の到着がこれまでよりも遅くなったり、配達にかかる日数が変動したりする可能性が出てきます。特に遠隔地へのゆうパックなどは影響が出やすいかもしれません。

【影響2】私たちの送料が上がる可能性も?

これまで自社で運んでいた荷物を外部の会社に委託すると、当然ながらコストがかかります。日本郵便は、この増加する物流コストを吸収するために努力するでしょうが、場合によっては郵便料金やゆうパックの料金が将来的に値上げされる可能性もゼロではありません。配送料値上げの可能性も視野に入れておく必要があるでしょう。

【影響3】日本の物流全体が不安定に?

今回の問題は、日本郵便だけの問題ではありません。実は、日本の物流業界全体は今、「2024年問題」という大きな壁に直面しています。これは、今年4月から適用されたトラックドライバーの労働時間規制によって、人手不足輸送能力の低下物流コストの増加が懸念されている、日本の物流業界全体が直面する大きな課題です。

そんな中で、日本郵便という巨大な会社が大量の荷物を外部に委託することで、すでに人手不足に悩む他の運送会社にさらに負担がかかる可能性があります。これは、物流業界全体の人手不足を加速させたり、運送コストが上昇したりする原因にもなりかねません。

結果として、日本全体の物流の安定性にも影響が及ぶ可能性があるのです。

赤いバイクや軽トラックの配達は大丈夫?

ご安心ください。皆さんのご自宅に郵便物やゆうパックを届けてくれる、あの赤いバイクや軽トラック(通称:ラストワンマイル配送)は、今回の行政処分の対象外です。これらは、法律上の分類が異なるため、今後も通常通り郵便や荷物を配達してくれます。

利用者ができること・心がけておきたいこと

今回の日本郵便の行政処分と、それによる物流への影響を考えたとき、私たち利用者ができることや心がけておくと良いことがいくつかあります。

  • 急ぎの荷物は早めに発送を: 特にゆうパックなど、配達日数が変動する可能性がある荷物を送る際は、これまで以上に余裕を持って発送するようにしましょう。早めの発送を心がけることで、万が一の遅延にも対応しやすくなります。
  • 追跡サービスをこまめに確認: 発送したゆうパックなどは、追跡サービスを活用して現在の状況をこまめに確認しましょう。日本郵便のウェブサイトなどで簡単に確認できます。
  • 日本郵便からの情報をチェック: 日本郵便は、今後のサービス変更や遅延に関するお知らせをウェブサイトなどで発表する可能性があります。最新情報を定期的に確認し、状況を把握しておきましょう。
  • 不明な点は問い合わせを: 配達に問題があったり、不明な点があったりする場合は、躊躇せずに日本郵便の問い合わせ窓口や最寄りの郵便局に連絡して確認するようにしましょう。

他の宅配サービスは? 今後の日本の物流はどうなる?

今回の日本郵便の行政処分は、国内の物流全体にも波紋を広げる可能性があります。

  • 他の宅配サービスへの影響: 日本郵便が大量の業務を他の宅配事業者(ヤマト運輸、佐川急便など)に委託することで、これらの事業者にも少なからず影響が出ることが考えられます。すでに2024年問題で輸送能力がひっ迫している中で、さらなる業務増加は、ドライバーの負担増やサービス品質への影響につながる可能性もゼロではありません。
  • 物流業界全体の再編加速: 今回の件は、物流業界が抱える人手不足コストの問題を浮き彫りにしました。今後は、運送会社の業務効率化や、AIやロボットを活用した新たな物流システムの導入など、業界全体の再編やイノベーションが加速するきっかけになるかもしれません。私たちの郵便ゆうパックのあり方も、長期的に見て変化していく可能性を秘めています。

よくある質問(Q&A)

Q1: 今回の行政処分で、郵便物の配達が止まることはありますか?

A1: いいえ、郵便物の配達が完全に止まることはありません。日本郵便は、子会社や他の運送会社への委託などで対応し、サービスを継続します。

Q2: ゆうパックの配達は遅くなりますか?

A2: ゆうパックの幹線輸送に影響が出るため、これまでよりも配達にかかる日数が変動したり、遅延が発生したりする可能性はあります。特に遠隔地への配達で影響が出やすいと考えられます。

Q3: 郵便料金やゆうパックの料金は上がりますか?

A3: 現時点ですぐに料金が上がるという発表はありません。しかし、外部委託によるコスト増を吸収できない場合、将来的に郵便料金やゆうパックの料金が値上げされる可能性はゼロではありません。

Q4: 他の宅配便(ヤマト運輸、佐川急便など)も影響を受けますか?

A4: 今回の行政処分は日本郵便が対象ですが、日本郵便が他の運送会社に大量の業務を委託することで、業界全体の人手不足が加速したり、輸送能力がひっ迫したりする可能性があります。その結果、間接的に他の宅配便サービスの提供にも影響が出る可能性は考えられます。

今回の問題から考えること

今回の日本郵便の行政処分は、単なる会社の問題にとどまらず、私たちの生活を支える物流の安全と安定性に関わる大きな問題です。

すぐに大きな混乱は起きないでしょうが、今後、郵便やゆうパックのサービス内容や料金、そして日本の物流全体が少しずつ変わっていく可能性があります。

私たちは、郵便や荷物を当たり前に受け取れることのありがたさを再認識し、そして企業が安全やルールを守ることの重要性を改めて考えるきっかけにしたいですね。