記録的な大雨に見舞われた千葉県では、道路の冠水や車の水没が相次ぎ、車内に閉じ込められる被害も報じられました。
普段から利用している道路であっても、短時間に激しい雨が降れば状況は一変します。特に周囲より低くなっているアンダーパスや高架下では、わずかな時間で水位が上昇し、車が立ち往生してしまうこともあります。
もちろん、冠水した道路へ進入せず、危険を感じた段階で引き返すことが最も重要です。しかし、突然の豪雨によって身動きが取れなくなる可能性は、完全には否定できません。
万が一、車内に閉じ込められたときの「最後の脱出手段」として備えておきたいのが、緊急脱出用ハンマーです。
🌧️ 冠水した道路では車が動けなくなる可能性がある
見た目では浅そうに見える冠水路でも、実際の水深や道路の状態を車内から正確に判断するのは困難です。
そのまま進入すると、エンジンや電気系統が停止して車が動かなくなるだけでなく、水位の上昇によってドアが開けにくくなる可能性があります。
国土交通省も、台風や豪雨の際には道路が冠水する前に早めに避難し、万が一に備えて車内へ脱出用ハンマーを備えるよう呼びかけています。
「いつも通っている道だから大丈夫」と考えず、冠水している場所を見つけたら進入しないことが第一です。
🔨 緊急脱出用ハンマーとは?
緊急脱出用ハンマーの正式な規格名称は、「自動車用緊急脱出支援用具」です。
事故や水没によってドアや窓が開かなくなった際に、車の窓ガラスを割って脱出口を確保するために使用します。
製品によって形状は異なりますが、主に次のような種類があります。
- 金づちのように握ってガラスをたたく「ハンマータイプ」
- ピックのように握って使用する「ピックタイプ」
- ガラスに押し当てて先端を作動させる「ポンチタイプ」
シートベルトカッターを備えた製品も多く、事故の衝撃などでシートベルトが外れなくなった場合にも役立ちます。
🚨 車が水没したときの脱出手順
車が冠水路などで動かなくなった場合は、慌てず、可能な限り早い段階で脱出することが重要です。
1.まずドアが開くか確認する
水位が低くドアが開く状態であれば、すぐに車外へ避難します。
ただし、水位が上昇すると車外から水圧がかかり、ドアを開けることが難しくなります。
2.窓を開けて脱出する
ドアが開かない場合は、パワーウインドウが作動するうちに窓を開けます。
水没すると電気系統が停止する可能性があるため、窓が動くうちに脱出口を確保しましょう。
3.窓が開かなければ脱出用ハンマーを使う
ドアも窓も開かない場合は、緊急脱出用ハンマーで側面または後面の窓ガラスを割り、脱出します。
このとき、基本的にフロントガラスを狙ってはいけません。フロントガラスには、割れても破片が飛び散りにくい「合わせガラス」が使われており、ハンマーでたたいてもひびが入るだけで、脱出口を作れない可能性があります。
窓ガラスが水面より高い位置にあるうちに、できるだけ早く脱出することが重要です。
4.ハンマーがなければヘッドレストを最後の手段に
脱出用ハンマーを用意していない場合や、事故の衝撃で保管場所から取り出せなくなった場合は、座席のヘッドレストを使って強化ガラスを割れる可能性があります。
ヘッドレストを外し、クッション部分を持って金属製の支柱の先端角を窓ガラスへ当てます。このとき、ガラスの中央ではなく、右上や左上など窓枠に近い四隅を狙うことがポイントです。
また、金属製の支柱をドアとガラスの隙間へ差し込み、ヘッドレストを押し引きして、てこの原理でガラスを割る方法もあります。
岡山市東消防署が行った検証では、支柱でガラスを力いっぱい突くだけでは破壊できませんでした。一方、四隅を支柱の先端角でたたく方法と、支柱を隙間へ差し込み、てこの原理を利用する方法では強化ガラスを割ることができました。
ただし、ヘッドレストを使う方法は、どの車でも確実に行えるわけではありません。
- ヘッドレストを取り外せない車種がある
- 支柱がドアとガラスの隙間に入らない場合がある
- 水没した狭い車内では十分に動けない可能性がある
- 合わせガラスは割れない
- ガラスの破片でけがをする危険がある
ヘッドレストによる脱出は、専用の脱出用ハンマーに代わる確実な方法ではありません。ドアや窓が開かず、脱出用ハンマーも使用できない場合の最後の手段として覚えておきましょう。
可能であれば、事前に自分の車のヘッドレストを取り外せるか確認しておくことも大切です。ただし、車を傷つける恐れがあるため、実際にガラスをたたいたり、支柱を窓枠へ差し込んだりする練習は行わないでください。
5.それでも脱出できない場合
ハンマーやヘッドレストを使えない場合でも、最後まで諦めないことが大切です。
車内に水が入り、車内外の水位差が小さくなると、ドアにかかる水圧も弱まり、開けられる可能性があります。ドアが動く状態になったら、大きく息を吸い、足などにも力を込めて押し開けます。
ただし、これはほかの方法で脱出できなかった場合の最終手段です。まずは水位が低いうちにドアや窓から脱出することを優先してください。
関連記事:🚗 豪雨で車が水没してドアも窓も開かない!最後まで諦めないための脱出方法
⚠️ すべての車の窓を割れるわけではない
緊急脱出用ハンマーやヘッドレストで割れるのは、基本的に「強化ガラス」です。
JISマークの付いた自動車用ガラスでは、マーク付近に「T」または「TP」と表示されているものが強化ガラスです。
一方、「L」または「LP」と表示されているものは合わせガラスで、一般的な脱出用ハンマーでは脱出口を作れません。
近年はフロントガラスだけでなく、静粛性や防犯性を高める目的でサイドガラスにも合わせガラスを採用している車種があります。
いざというときに迷わないよう、次の点をあらかじめ確認しておきましょう。
- 自分の車のどの窓が強化ガラスなのか
- どの窓を割れば脱出できるのか
- 脱出用ハンマーの使い方
- ヘッドレストを取り外せるか
- 同乗者や子どもを脱出させる順番
ガラスの種類が分からない場合は、車の取扱説明書を確認するか、販売店へ問い合わせておくと安心です。
📍 ハンマーは「手の届く場所」に固定する
脱出用ハンマーを車に載せていても、緊急時に取り出せなければ意味がありません。
トランクや荷室の奥はもちろん、衝撃で開かなくなる可能性のある場所や、手の届かない場所への保管は避けましょう。
運転席に座り、シートベルトを着用した状態でも取れる位置へ、付属のホルダーなどを使って固定しておくことが重要です。
候補としては、次のような場所が考えられます。
- 運転席横
- センターコンソール付近
- 運転席側のドアポケット周辺
- シート下の手が届く位置
固定せずに置くだけでは、事故や急ブレーキの衝撃で足元や座席の下へ移動してしまう可能性があります。購入後は車に載せるだけで終わらせず、保管位置まで決めておきましょう。
🔍 緊急脱出用ハンマーを選ぶときに確認したいこと
緊急脱出用ハンマーには、ガラスをたたいて割るハンマータイプのほか、ガラスへ押し当てて使用するポンチタイプなどがあります。
購入する際は、価格や大きさだけでなく、次の点も確認しておきましょう。
- 強化ガラスを破砕するための十分な性能があるか
- シートベルトカッターが付いているか
- 緊急時にも握りやすい形状か
- 車内へ安全に固定できるホルダーが付いているか
- JISマークやGSマークなど、性能を確認できる表示があるか
例えば、Amazonでは、ウィンドウハンマーとシートベルトカッターを備えた「Amazonベーシック レスキューハンマー」も販売されています。
硬質タングステン金属を採用したハンマー部分に加え、シートベルトを切断するためのカッターや保管用ブラケットを備えた、比較的シンプルな製品です。明るいオレンジ色で、車内でも見つけやすいデザインになっています。
ただし、商品ページには「合わせガラスには使えない」と記載されています。また、現時点の商品説明からは、JIS D 5716への適合やJISマークの取得を確認できません。
国土交通省は、JISマークやGSマークを取得した製品、または自動車販売店などが推奨する純正品等を案内しています。特定の商品だけで判断せず、自分の車に使われているガラスの種類や、商品の最新情報を確認したうえで選ぶことが大切です。
🛒 万が一に備えて、車内へ緊急脱出用ハンマーを
緊急脱出用ハンマーは、普段の運転では使わない道具です。しかし、事故や水没によって車内に閉じ込められたときには、脱出できるかどうかを左右する可能性があります。
大雨や台風が近づいてから慌てて探すのではなく、平常時に準備し、使い方や保管場所まで確認しておきましょう。
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購入後は車内へ置くだけで終わらせず、運転席から確実に手が届く場所へ固定しておくことも忘れないようにしましょう。
☔ 豪雨時は「ハンマーがあるから大丈夫」と考えないこと
緊急脱出用ハンマーは、冠水した道路へ進入するための装備ではありません。あくまで、避けられない状況で車内に閉じ込められたときの脱出手段です。
大雨の際は気象情報や道路情報を早めに確認し、不要不急の運転を控えましょう。運転中に冠水した場所を見つけた場合は、そのまま進まず、安全な場所へ引き返す判断が何よりも重要です。
使う機会が訪れないことを願いながら、それでも万が一に備えておく――。緊急脱出用ハンマーを常備することは、自分自身だけでなく、家族や同乗者の命を守る準備にもつながります。
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