近年、プライバシー保護の強化により、Web広告やマーケティング業界では**ITP(Intelligent Tracking Prevention)**の影響が大きくなっています。特にSafariを利用するユーザーに対しては、サードパーティCookieを利用したトラッキングが制限され、リターゲティング広告やコンバージョン計測に課題が生じています。
今回は、ITPの概要と、その影響についてご説明します。
1. ITPとは? 基本的な仕組みを解説
ITP(Intelligent Tracking Prevention)は、AppleがSafariブラウザに搭載しているトラッキング防止機能で、Webサイトがユーザーの行動を追跡するのを制限します。2017年に導入されて以降、アップデートを重ねるたびに制限が厳しくなっています。
1-1. ITPの主な制限内容
✅ サードパーティCookieのブロック(リターゲティング広告の影響)
✅ ファーストパーティCookieの有効期限短縮(長期のコンバージョン計測が困難に)
✅ トラッキングURLパラメータの自動削除(クリック計測の影響)
1-2. ITPの影響を受ける環境
ITPは主にApple製デバイスのSafariブラウザに適用されます。
- iPhone・iPad(iOS・iPadOSのSafari)
- Mac(macOSのSafari)
※iOS版のChromeやFirefoxもSafariのWebKitを利用しているため、ITPの影響を受けます。
一方、Windows・AndroidのChrome、Firefox、Edgeには適用されません。
ただし、Google Chromeも2024年以降、サードパーティCookieの廃止を段階的に進める予定であり、広告業界への影響はSafari以外にも広がっています。
2. ITPによるマーケティングへの影響
ITPの導入によって、従来の広告手法やデータ計測の仕組みが変わりつつあります。
2-1. 影響を受ける広告施策
🔻 リターゲティング広告の精度低下
→ サードパーティCookieがブロックされるため、訪問履歴をもとにした広告配信が難しくなる。
🔻 コンバージョン計測の精度低下
→ ファーストパーティCookieの有効期限が短縮され、長期間の計測が困難に。
🔻 広告配信の最適化が困難に
→ 計測データが不足することで、Google広告やFacebook広告のターゲティング精度が低下。
3. ITP対策として有効な施策
ITPの影響を最小限に抑えるためには、以下のような対策が求められます。
3-1. ファーストパーティデータの活用
💡 サードパーティCookieに依存せず、ファーストパーティデータを活用することが重要。
- Googleタグのサーバーサイド計測(GA4、Enhanced Conversions)を導入
- Facebook Conversions API(CAPI)の活用で広告最適化を維持
3-2. サーバーサイドトラッキングの導入
💡 クライアントサイドではなく、サーバー経由でデータを収集することで規制の影響を軽減。
- Google Tag Manager(GTM)のサーバーサイドコンテナを利用
- 独自のサーバーログを活用してユーザーデータを分析
3-3. 計測方法の最適化
💡 ITPの影響を受けにくい計測手法を導入し、データの補完を行う。
- Google Consent Modeを活用し、ユーザーのプライバシーに配慮しながらデータ補完
- Attribution Reporting APIを導入し、間接的な広告効果測定を実施
4. Google Chromeの動向と今後の対応
2024年からGoogle Chromeも、サードパーティCookieの廃止を段階的に開始しており、広告計測の仕組みが大きく変化しつつあります。
✅ 2024年1月 – 1%のユーザーでサードパーティCookieを無効化開始
✅ 2024年後半以降 – 全ユーザーを対象にしたサードパーティCookie廃止が予定されているが、正式なスケジュールは未定
Chromeでは、Privacy Sandboxという新しい技術を導入し、サードパーティCookieの代替手段を提供しています。
💡 対応策
- Google Topics API(ユーザーの興味ベースのターゲティング)の活用
- Protected Audience API(旧FLEDGE:リターゲティング代替技術)の導入
- GA4とEnhanced Conversionsの最適化
まとめ
ITPの影響が年々強まる中、マーケティングや広告の手法も進化が求められています。特に、ファーストパーティデータの活用やサーバーサイド計測の導入が、今後の広告運用において不可欠となるでしょう。
🔹 ITPの影響を受けるのは主にApple製デバイス(Safariブラウザ)
🔹 Google Chromeも2024年以降、サードパーティCookie規制を進行中
🔹 ファーストパーティデータの活用、サーバーサイドトラッキングが重要
今後のWeb広告の変化に対応するために、早めのITP対策を進めていきましょう!